最終章 魔王の我輩、勇者の我輩

第1話 『それはいい! 実にいい!!』

 結局ヴァムシの奴は予想以上に単純で脳筋の魔族だった、死霊術を目の前で披露するとゾンビは傷付いても動く兵士だ! 人数も増え戦力が上がる! と大喜びして私を簡単に配下に加わえた。

 が、そのヴァムシも戦であっけなく死んでしまった。驚いたのはあとを継いだデイルワッツがザイディとジュラージを倒してしまい。それからデイルワッツは子供の頃に言った通り約500年後、本当に魔界を征服してしまった。


 私はデイルワッツの世話係り兼相談役だったがそのおかげで悪魔元帥の地位を受けた、しかし元とはいえ天使が悪魔元帥とはな……天使か、その天使がいる天界は今だ動きを見せない。一時的だったはずがまさか未だに結界を張り続けているとはな、恐らく結界を解かないのはデイルワッツの存在とそれに対抗できる戦力が今の天界にないからだろう。

 天界も動かない、長い時間かかったが私の魔力もだいぶ戻った、そろそろ人間界にデイルワッツを差し向ける様に行動に移してもいい頃かもしれないな。



「ん~、やはりこの椅子の座り心地はいいな~」


 デイルワッツの奴、相変わらず無駄にでっかい椅子にふんぞり返ってるな……。


「デイルワッツ様、よろしいでしょうか?」


「む? どうしたのだ、アナネットよ」


 さてと、さっさと人間界に攻めるようにしないとな。


「私に考えがあるのですが――」


「何だ? アナネットの考える事というのは?」


 アルフレド、なんでお前が聞いてくるんだよ。


「はぁ……続けよ。アナネット」


 デイルワッツもうんざりしているようだ。

 なんでこいつが私と同じ悪魔元帥なんだろうか。


「はい、デイルワッツ様のお力により魔界は統一されました。どうでしょう……天界も動こうとしないこの好機に人間界をもデイルワッツ様の物にするのはいかがですか?」


「……………………人間界ねぇ」


 うわ~……興味なさそうな顔をしてるよ……これは何とかしないと。

 かといってどうこいつを動かすか……。


「そうです! アナネットの言うとおり人間界を征服するべきです! さすれば魔王デイルワッツ様は大魔王デイルワッツ様へと名乗るべきです!」


 っアルフレドの奴、また横から!

 デイルワッツの奴、呆れて頭抱えてしまったではないか!! どうするんだよ、これ!


「……………………我輩が大魔王……か」


 え?


「チョハ! それはいい! 実にいい!!」


 え? え?


「よし! 決めた! アルフレドは今すぐ四天王を集めよ。アナネットは四天王が集まり次第すぐ攻め入る計画を立てれるように準備をするのだ!」


 ええ!? そんな事で簡単に動いちゃったよ!


「はっ! すぐに四天王を集結させます」


「は、はっ! わかりました、今から準備いたします」


 嘘だろ!? まさかアルフレドが役に立つとは思いもしなかった。

 まぁいいか、デイルワッツが人間界に攻めるのであればどんな理由だろうとかまうものか、この時ばかりはこいつに感謝しないとな。



 人間界に攻め込んで約1週間か、今だ動きがないが……。


「アナネット様、ご報告があります」


「なんだ?」


 お、噂をすれば人間界に送り込んでいた見張りが来た。という事は――。


「人間界に動きがありました、どうやら近々何か行うそうです。詳細はこれに」


「ふむ、どれ……」


 詳細といっても私が考えた筋書きが書かれているだけだろうが……よし、予定通り人間界で天使の剣としての儀式を行うと書いてある、いいぞ!


「……なるほど、わかった。私からデイルワッツ様にこの事を伝えておく、お前は引き続き人間界を見張れ」


「はっ」


 では、作戦通りに死霊術から進歩したように見せかけて私が【私】を取りに行くか。



「やはり動かずか……500年前の魔天戦争様々だな! 魔界は我輩の手に!! そして今は人間界をも手にしようとしているのだからな! チョッハハハハハハ――」


 相変わらずのん気にへんな笑い方でふんぞり返っているな。


「ですが人間界である儀式が行われるそうです」


「――ハハハハ……ハ?」


 さすがにデイルワッツでもこの話は引っかかったようだな。


「ある儀式だと?」


「『天使の剣を抜いたものが勇者となり魔王を討つべし』、どうやら天使共が天界に結界を張る前に人間に剣と結界石を渡したと思われます。そしてその剣を抜く儀式が近々行うとの事です」


 まぁそれをするようにさせたのは私だが。


「それと確証がなかったため今この時のご報告になる事をお許しください。先日、ある実験を行い成功させ結界石の中に入る方法はございました。」


 本当は昔から出来たが最近にしておかないと今まで隠して意味がないしな。


「よいよい、姿が見えん時もあるとは思っていたが――してその方法とは?」


 よしよし、食いついてきた。


「ありがとうございます、方法は私めの固有魔法である死霊術でございま――」


「死霊術だと!? それではゾンビになるだけで結界石の中には入れない……ヒィ!」


 こいつはいつもいつも邪魔しおってからに!!


「アルフレド、最後まで私の話を聞け、確かに普通の死霊術ではゾンビになってしまいます。ですが研究を進め人間が生きている時に悪魔の魂入れその体を乗っ取る、それなれば生きた人間とし――」


「なるほど! 悪魔の体では無理でも人間の体ならば結界石の中に入れるということか!! いや待て二つの魂を1つの体、ましてや人間の体にそんなこピョッ!?」


「ア~ル~フ~レ~ド~最後まで聞けんのか貴様は!!」


 いいぞ、もっと言ってやれ。


「はぁ~では話を戻しますが、細かく説明すると邪魔が入りそうなので簡潔に、確かに二つの魂が入ると負担が掛かります。ですが悪魔の魂に魔力を混ぜれば脆弱な人間の魂は消滅、そのまま人間の体を乗っ取れるということになります。後残った悪魔の体は魔界からあふれ続ける魔力のおかげで仮死状態になり、そのため元の悪魔の体に戻せることも確認済みでございます」


「素晴らしい!! 今すぐにその方法で侵略を進めるのだ!! ――ん? どうしたのだ?」


 後は私が作戦を進めるように演技をしてっと。


「恐れながら、今すぐに人間の体を大量に捕獲することは難しく……実験のために捕虜してある人間からでも健康的な者だと10人くらいが限界、しかも攻め込ませる悪魔の選別も――」


 と言っても行くのは悪魔でも人間でもなく、簡単には入れる天使の私なんだけどな。


「なに人間も悪魔も1人でかまわん」


 ん? 何を言っているんだ?


「と申しますと?」


 なんだろう、すごくいやな予感がする。


「我輩が直々に天使の剣の破壊とその抜いた者を始末してくれよう!! 人間共に絶望の味をあわせてくれるわ!! チョッハハハハハハ!!」


「はいぃぃぃぃぃぃぃ!?」


 いやな予感的中!!

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