第5話 『そうかなるほど、ってそんな事で納得できるか!』
やれやれ、暖かいのは限られた場所だけだから廊下はクソ寒い、便所行くだけで一苦労だ。
「ん? あそこにいるのは……」
爺さんと……フェリシアか? 爺さんは資料を見るためにカルリック王の部屋に閉じこもっておったが、出てきておったのか。
一体何のやり取りをしておるのだろうか?
「ダリル様、頼まれたもの出来ましたですが……」
「すまぬなフェリシア。――ほうこれが例の奴か」
「はい……ですが――」
なんだか見てはならぬ現場を見てしまったようでつい隠れてしまった。
「わかっとるわかっとる。最初に説明も聞いたし、大丈夫じゃ」
「は、はい……」
「さて、わしはラデニスの部屋に戻る。何かあれば呼んでくれ」
「はい、おやすみなさいです……………………本当に大丈夫かな……」
二人とも行ってしまった。
ふ~む、何かを渡していたみたいだが……うう、それより便所便所っと。
※
「爺さん、我輩だ。入ってもよいか?」
結局、気になって爺さんのとこへ来てしまった……。
《勇者殿か、かまわんぞ》
「では入るぞ……おう!? 何だこの部屋は!?」
部屋の壁や床に紙、紙、紙!足の踏み場もないではないか!
「言っとくがわしが散らかしたんじゃないぞ、元からじゃ。あいつは整頓という言葉を知らんからな」
いや、それでもこれは散らかりすぎではないか? この城のメイド共は何をやって……いや感じ的に片付けるのを止めてそうだな。
ん? これがバルフライの資料か、どれどれ……。ふむ、バルフライの居場所に戦力の事も調べてはあったみたいだがやはり魔剣の対処は実戦では出来なかったみたいだな。
「やはり魔剣の事は知っておったみたいじゃな、対策も考えてはあった……が現状を見る限り通用しなかったとみえる」
「そうみたいだな」
人間としてはよくやってるとは思うが、相手が悪かったとしか言いようがない。
「では我輩はもう休ませてもらうぞ」
「ああ」
う~廊下は寒いな……ってしまった! あの部屋に資料の事で頭がいっぱいでさっきのフェリシアとのやり取りを聞くのを忘れて出てきてしまった!
……また部屋に戻って聞くのも変だし明日聞けばいいか、結局我輩は何しに来たのか。
※
「あ~暖かいのは素晴らしい事だな」
寒い所からの暖かい部屋はいいな――っ!? ベッドに誰かいる!?
「ク~カ~」
「なんだ、エリンの奴が寝ておるのか、焦ったではない……」
ってなんでこいつがここで寝ておるのだ!? それぞれに一人部屋が用意されたはずなのに!!
「おい! こら! 何故貴様がここで寝ておるのだ!?」
「ん~……だって……むにゃ……アブソーヘイズがここに……ある……から……むにゃ……近くに……いないと……ク~カ~」
「そうかなるほど、ってそんな事で納得できるか! そもそもベッドから出ろ!! 我輩のベッドだぞ!」
「う~……や~だ~! 寒い~!」
「いやではない! !この!!」
このまま無理やりにでも引きずり出して――。
「う~~!! スリー……」
「はっ! と……危ない危ない!」
危うく前のように眠らされるとこだった、しかしこれではあいつを出すことが出来ない……そうなると我輩がベッドで寝られないではない……部屋にはソファーがあるが、あんな床よりましだがこのソファーで寝ないといけないのか? この部屋は我輩の為に用意してもらったのに?
どう考えてもおかしいだろうが!! くそがぁあああああああああああああ!!!
※
「デール! デール! 起きて!!」
「むにゃ……なんだ……この真夜中に……へっくちょい!」
結局このソファーで寝るはめになってしまった、部屋が暖かいとはいえこんなソファーで寝るにはやっぱ寒いな。
「ダリ爺が城の外に行っちゃったんだよ!」
はぁ? 何言ってるんだこいつ?
「そんなわけあるか……こんな雪の中でしかも夜だぞ、寝ぼけるのも大概にしろ」
まったく、ただでさえちゃんと寝れないのに起こしよって。
「見間違いじゃないもん! 偶然だけど出て行くのが見えたんだよ!」
まだ言うか。
「そもそも何故爺さんはカルリック王の部屋に――」
「じゃあアタシがダリ爺がいるか見てくるよ!!」
文字通り飛んで行ってしまった……よし、ベッドが空いた今のうちにそっちに。
※
まさか本当に爺さんの奴が居ないとは、エリンのこのドヤ顔が腹立つ。
む? さっき見たこの資料、何か足りないような……地図? エリンが言ってた事が本当ならそれを持って一人でバルフライに挑みに行ったのか!?
「エリン、お前は今すぐ爺さんの後を追いかけろ! いくら爺さんでも夜の雪の中ではそう遠くまで行けないだろうからその目なら見つけられるはずだ! 我輩はベルトラとフェリシアを起こして後から追いかける!」
「了解! ……って、ねぇデール達はどうやって追いかけてくるの?」
「ハッ!!」
地図は爺さんが持って行ってるし、どの道この暗闇でしかも雪の中を追いかけるなんて無理だぞ!
どうする!? 何かないのか!? 何か……赤いシーツのベッド……そうだ!
「ちょ! デール! 何シーツを千切ってるのさ!? 怒られるよ!」
「緊急事態だ! 仕方あるまい――よし! エリン、これを見える範囲内で木の枝に結んでいくのだ」
「なるほど、それを目印に追いかけてくるんだね。わかった! 任せて!」
本当に頼むぞ……それがなければ付いて行くどころか城に戻れなくなるかもしれんから。
※
「あ、そこに印があるです!」
よしよし、ちゃんと印を付けて行っておるな。
「ではあの印を追って行くぞ」
「わかりました、……ダリル様どうかご無事で」
しかし、爺さんの奴。何故一人でバルフライの元に向かったんだ? 何か理由があるのか?
※
お、エリンの奴が居た……が何故雪だるまの姿になっておるのか。
「あ! みんなこっちこっち!」
っ! あの馬鹿が!
「大声を出すな! 我輩たちが追ってきているのがばれ――っ!」
おっと、つい我輩も釣られて大声を出してしまった。
「あ~それは大丈夫だよ」
あ、こいつ今目をそむけおった。
「……どういう事だ? それにその格好はなんだ」
何がどうなればそんな姿になるのか。
「……え~とね」
目が泳いでいる……これはすでに何かしでかしたな後だな、これは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます