第4話 『寝るならお城にあったフカフカベッドがいい!』
英雄といっても地べたに正座させられてる姿は小物にしか見えないのが不思議だ。
「で? ダリル様、一体何をしでかして逃げてきたんですか?」
ベルトラがもの凄く冷たい視線で爺さんを見てる。
「心当たりが多すぎるから……逃げてきた……」
もはやベルトラの視線だけで人を殺せるのではないのかってくらいやばい、本当にあの目は人間の目か!?
「じゃあ、あの悪魔は一体なんなのですか?」
さすがの爺さんもあのベルトラの目は怖いらしい、すごい怯えている。わかるぞ~その気持ち。
「逃げてる最中に出くわして八つ当たりでつい……」
ついって、おい! 八つ当たりで同胞を殴るなよ!
「で、私達に遭遇したと……なんで畑の野菜を盗み食いなんてウソをついたのですか?」
「それはですね、妻が怖いからと逃げてた上に悪魔に対して八つ当たりをしたなんてかっこ悪くてついウソをつきました」
もはや敬語になってきてる……。
「それじゃこの悪魔は盗み食いなんてしなかったんだね~」
よかった、悪魔の品質がこれで戻る事ができた……のか?
「じゃあ、明日の同行の話も……」
「勇者一行に出会って討伐の手伝いをするとなれば、居なくなった言い訳になると思いまして……はい」
我輩たちを言い訳のダシに使うとこだったのかこのジジイ!
「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
長いため息つきすぎだろ、まぁ我輩もこんな身内がいたら同じように苦悩したかも知れぬが……。
「大体の事情はわかりました、では今すぐ帰ってください」
「判決はや!! ベルトラ! もう少し考えてくれてもいいじゃないか!?」
「当たり前です! それに考えるも何もサリーサ様が来られる以上ここにいてどうするんですか!?」
「それはそうだが~……のぉ?」
のぉ? って……おい、我輩を見るな!
「デール殿、甘やかさないでください」
ほら! 矛先がこっち向いたではないか! それに我輩何も言ってないのに理不尽すぎるぞ!
「勇者殿~」
「デール殿!」
2人してこっちを見るな! なんで我輩に絡んで来るのだ、身内の問題は身内で解決せぬか!
とはいってもこれじゃ埒が明かんか……本音としては今は一人でも多く戦力にもなりいざという時の我輩の盾になる者がほしい、そう考えると。
「ベルトラ、ここは爺さんに同行してもらったほうがいいのではないか?」
「な!? しかし!」
「貴様の言いたいこともわかるが奇襲が失敗する可能性もある、そう考えると少しでも戦力的に上げときたい」
「ですが……」
納得してない顔だな~……。
「責任はすべて我輩がとる、それでどうだ?」
こんな事言いたくもないが仕方あるまい……これも生き残るための手段だ。
「……わかりました」
納得してない顔だな~……。
「勇者殿~~」
うれしそうな顔してるな~……。
「あ、そうだデール、ちょうどいいからあの悪魔から少しでも魔力を吸収しとこうよ」
こいつはいつも唐突に言ってくるな……。
「何故そん事せねばならぬ?」
「デールから魔力を吸収して今はその分が貯蓄されてるけど戦闘になった時に足りない! ってなったら困るでしょ? だから少しでも魔力をアブソーヘイズにためとかないと、あと魔力変換をロックしとけばこの悪魔も何も出来ないし」
天使の剣に魔力を蓄積なんて話聞いてないしロックのことも知らんのだが……それよりも。
「……最初の悪魔と遭遇した時それを言わんのだ」
「言う前にデールが突っ込んじゃうし、そのあと一撃でベルが仕留めちゃうし、魔力は生命力から変換されるものだから生きてる状態でないと無理だよ」
「うっ」
痛いとこをつかれてしまった。
「くそ……で? どうすればいいのだ」
「剣先を少しでもいいから刺し続けるだけで大丈夫、深く刺せばさすほど触れる範囲が広くなるからその分吸収量が上がるけどね」
「なるほど……ん? ちょっとまて、魔力は生命力から変換され体内に溜まる……なのに今の我輩は何故魔力が溜まらぬ?」
いつもの何言ってんだ? の首傾げのエリン……腹が立つ!
「え? それはもちろん変換された分はアブソーヘイズのほうに流れていってるし」
「おい! またしても初耳な事をさらっと言ったな! 今までにそういう重大な話をまとめて言える時なんていくらでもあったぞ!?」
「……えと……あ、その悪魔の魔力は吸収しロックもしたからもういいよ~」
「おい! 話をそらすな!」
空中に逃げられた! くそ!
※
「さて、そろそろ寝る支度をしますか。もう日も落ちますし、明日に備えて……はい、2人の分です」
「「「えっ!?」」」
「3人揃ってどうしたんですか?」
「こんな布切れ1枚を敷いたとこで寝ろと!? こんなの地面に直接寝てるのと変わらないぞ!?」
「そうだよ! 寝るならお城にあったフカフカベッドがいい!」
いや、さすがにそれは無理だ。
「フカフカとまではいかんがせめてどこか宿を……あ……」
我輩は何を馬鹿なことを言っているのだ、ここは山奥……宿どころか家もあるわけがない……。
「その顔で私の言いたい事がわかったみたいで何よりです、少しでも快適にしたければ自分の周りをきれいにしてくださいね」
てきぱきと自分の周りを整備していくベルトラ……本気だ、あやつは本気でここで寝る気だ。
「ちょっと待て! ベルトラ! わしの分の敷き布は!? いや! それよりこの正座をそろそろ……」
「アタシも物申――」
「元々3人分しかありませんしダリル様は見張りで明日までそのままです! いいですね! 以上! おやすみなさい!」
「「ちょっ!?」」
あっという間にベルトラが布に包まって蓑虫になってしまった……完全に取り付く島もないとはまさにこの事だな。いやもしかしたらこれがベルトラの最後の抵抗だったかも知れぬ。
「うう……ぐすん、デール~……」
エリンが泣付いてがこればかりはどうしようもない。
「エリン、諦めろ……我輩も諦めた……」
「そんな~……うう、やっぱ硬いよ~石が痛いよ~」
諦めて横になったのはいいがせめて石はどけろよ、我輩そこまで知らんぞ。
「うう……ぐすん、勇者殿~」
本当にこの爺さんを連れて行ってよかったのか? 我輩の判断間違えたか……?
「爺さん、付いて来られるだけでよかったと思え。諦めろ」
「そんな~……」
英雄とは一体なんだろう……。
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