第226話【プロローグ】

王国首都シュタウフェンの特別監獄で牢屋越しに会話をする

ヴァーグナーとファウスト。

ファウストが自身が死を許容した理由を話し始めた。


「俺には恋人が居たんだ」

「恋人・・・? そんなの初めて聞きましたよ」

「言って無かったからな・・・仲間の女性陣の様な

華やかさは無かったし普通の少女だったけど

彼女と一緒にいると本当に心から安心出来たんだ」

「そうだったんですか・・・」

「俺も当時は普通の村人だった、 貧しい村で結構キツイ生活だったが

彼女が居て本当に幸せだった、 彼女と過ごせる時間は短く

何時も時が止まれば良いのにな、 と思っていたもんさ」

「何だか羨ましいですね」

「そうだな、 俺も勇者として称えられる生活と

あの頃の生活なら、 間違い無くあの頃の生活を取るよ」

「・・・その恋人は今は?」

「ある日、 俺は村から離れて仕事をしていたんだ

すると村に魔物達の襲撃が有ってな・・・村は壊滅していたんだ」

「・・・・・」

「彼女も死んでいた、 焼け落ちた彼女の家から掘り出した彼女の死体は既に炭化していた」


ファウストは涙を流した。


「ファウスト殿・・・」

「それから俺は復讐の為に魔物を只管殺し続けた

殺し続け殺し続け殺し続け殺し続け殺し続け殺し続け

その内に魔王の存在を知った、 そして魔王を殺す為の技を編み出した

それが外術【無刃造】、 外術の存在は魔王信奉者を打っ殺した時に知って

何となくで外術を作る事に成功したんだ」

「な、 何となく?」


困惑するヴァーグナー。


「魔物を殺し続ける内に何となく

魔物を殺す方法を最適化する事が出来たんだよ

それからは楽に出来たって訳だ、 馬鹿みたいな理屈だがな

いや、 理屈にもなっていないか」

「そうですか・・・それが貴方が死ぬ理由になるのですか?」

「もう魔王を殺した、 後は彼女の元に逝くだけだ

だから悪いが女性陣の事を愛する事は出来ないんだ

イイ女達なのは理解出来る、 だけども俺の恋人は彼女だけなんだよ

彼女以外の女になびく訳には行かない、 だから俺は死ぬんだ

馬鹿を言っているのは百も承知だ、 だけど俺は馬鹿なんだ

だから逝かなくちゃ行けないんだ、 寧ろ逝きたいんだよ」


ファウストはとうとうと言葉を紡いだのだった

そしてヴァーグナーの顔が悲痛に歪み壁に倒れ掛かる。

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