第225話【前提の終わり】

「・・・・・せつめいしてくれめふぃすとふぇれす」

「一体何が如何してそうなったんだよ」


スクラッチとたいしが土のドームから仲良く出て来た

グレートヒェンとメフィストフェレスに尋ねる。


「ファウストを蘇生させる、 話はそれからだ」

「ファウストの蘇生か・・・ファウストの死体・・・全て揃っているのか?」

「残りはクレールが持っている、 と言う訳でクレール寄越せ」

「嫌だと言ったらこの場に居る全員でリンチにする」

「・・・・・分かったよ」


クレールから渡されファウストの遺体が全て揃った。


「これで・・・全部揃ったね」

『・・・・・いや、 まだ足りない』

「は?」

「如何した、 グレートヒェン」

「ファウストがまだ足りないってさ」

「足りない?」

「やはりそうか・・・」


ヴァーグナーが口を開く。


「ヴァーグナー?」

「どういう事だ?」

「珍しいから拾ったんだ」


ポケットから何かを取り出すヴァーグナー。

それは白い小さな何かだった。

まるで指輪の様にも見えた。


「ほね・・・かい?」

「喉仏だ」

「喉仏? こんな風になっているのか・・・」

「骨で残っているのは珍しいんだよ、 ちゃんと生きていないと

喉仏はこうも綺麗に残らない」

「ヴァーグナー、 それをこっちに渡して貰える?」

「良いだろう、 だがしかしグレートヒェン

これを渡す前に君に言っておかねばならない事が有る」

「何?」

「お前がファウストだと思っているその死体


ファウストでは無いぞ?」


沈黙が周囲を包む。


「・・・・・何を言っているの? 彼は間違い無くファウストだよ

私が見間違うと思っているの? ほら見てよ」


ファウストの頭部を体から出すグレートヒェン。


「ほらこの顔、 完全にファウストじゃない」

「確かにファウストの体だ、 だがそのファウストの体にはファウストの人格

つまり精神は入っていない、 中身は別物だ」

「そんな馬鹿な」

「馬鹿では無い

事実私がファウストと最後に会った時の会話の内容を分かっていない様だしな」

「・・・・・ねぇファウスト、 貴方はファウストだよね?」


グレートヒェンはファウストの頭部に問いかける。


「グレートヒェン、 私は一度もファウスト本人だと言った覚えは無いぞ?

ファウストと呼びかけられて自分の事だな、 と思って答えはしたが」

「騙したの!?」

「君の勘違いを私のせいにされても困る

だがしかし君に語った事は嘘では無い、 死体を全て回収し

強く願えば君に出来ない事は無いんだ

ファウストをファウストの精神で蘇らせる事は可能なんだよ」

「話はまだあるんだ、聞けグレートヒェン」

「・・・・・何よ」

「ファウストと最後に会った時の会話だ」

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