第151話【子の心、親知らず その3】

キャスリーンは自分の御付きの騎士ゲントと共に庭園で花を愛でていた。


「♪~♪~♪~」

「キャスリーン様、噂によると大きな戦が有る様ですが大丈夫ですか?」

「え?まぁそうですわね、悲しい事に」


そう言いながらまるで悲しんでいないキャスリーン。


「・・・キャスリーン様?何か嬉しい事でも有ったのですか?」

「えぇ、そうね、嬉しい事が有りました」

「それは一体・・・」

「此度の戦、建前だけかもしれませんが『民に自分達王族は民の事を思っている』と思わせる為に

大規模な軍を出すと言う事になります」

「はぁ・・・それで?」

「ゲント、私と貴方、どの位の付き合いになりますかね?」

「・・・は、キャスリーン様が孤児の私を拾い上げ

騎士としての教養を身につけさせて、かれこれ10年になります」

「10年、長かったわ、本当に・・・」


ゲントに近付くキャスリーン。


「キャスリーン様?」

「ゲント、これから私は貴方を脅します」

「・・・それは恐ろしいですね」


そう言いながら全く恐れていないゲント。


「ゲント、私の夫になりなさい」

「は?」


二度見するゲント。


「何と?」

「私の夫になりなさい」

「・・・・・・・・・・・・は?はい?」

「あらゲント、貴方はこんなに優しくて美しくて貴方の面倒を見続けて

地位も財も有る将来有望な女性の誘いを断ると?」

「・・・・・い、いやいやキャスリーン様?御冗談ですよね?」

「冗談なら良かったんですがねぇ・・・何で貴方の事を好きになったのだろうと

私自身不思議です、もっと利用価値の有る殿方と一緒になった方が良いと

理性では分かっています、損得勘定は出来る方だと私は自覚しています

しかし何故か貴方の事を好きになってしまったのです

ならば仕方ありませんよね?」

「・・・・・」


花を愛でる様な手付きでゲントの頬を触るキャスリーン。


「ゲント、私の夫になりなさい」

「み、身分が違いすぎます」

「それは大丈夫

民の事を思う優しいお父様は元は平民の騎士との結婚を喜んで認めるでしょう

私もそうすればこれ以上無理をしなくても済みます」

「無理?」

「えぇ・・・私が王に成りたかったのは貴方と結ばれる為

この国の頂点となれば自由に結婚相手を選べると思ったからです

しかし今回の出来事が有れば貴方と結ばれる事も出来るでしょう」

「・・・・・キャスリーン様・・・」

「ゲント、貴方は私の事が好きですか?」

「・・・・・そ、れは・・・」

「おぉ、こちらに居ましたかキャスリーン様」


庭園に現れるヨナス。


「ヨナス殿、如何なさいました?」


ゲントの頬から手を放しヨナスに向き直るキャスリーン。


「少々ゲント君に用事が有りまして、宜しいですかな?」

「わ、私にですか?」

「君はキャスリーン様の御付きの騎士だろう、重大な話なんだ、是非来て欲しい」

「分かりました・・・」


庭園をヨナスと共に離れるゲント。

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