第125話【仕事の邪魔】

若者の出で立ちは何やら立派な鎧や籠手に身を包んでいる。

見た目はチグハグで如何やら名の有る名匠が作った物で統一しているが

全ての装備が別の装備である。

例えば籠手は見た所オリハルコンだが、鎧はミスリルと言った具合である。


「失礼、ヴィンセントは在宅か?」


若者はグレートヒェンに尋ねた。


「今、仕事をしています」

「確かにその様だな、では失礼する」


小屋の扉を開けようとする若者の手を止めるグレートヒェン。


「・・・何用かな、御嬢さん」


若者が眉を顰めながら尋ねる。


「今ヴィンセントさんは仕事中なのですよ

申し訳有りませんが邪魔をしないで頂けますか?」


にこやかにグレートヒェンが若者の腕を掴みながら言う。


「何の仕事か知らないが私の依頼を受けて貰わねば困るのだよ」


若者が腕に力を籠める。


「そうですか、しかし順番位は守りましょうよ」


グレートヒェンがそれを上回る力で静止する。

若者は腕を引っ込めた。


「レディーファーストは要求する物じゃないぞ?」


力では歯が立たないと感じたのか弁を繰り出す若者。


「いえいえ、これは早い者勝ちと言う奴ですよ

そもそもレディーファースト云々の前に割り込みは人間として如何なんですか?」

「・・・そもそも女が武具を求めるのは如何なんだ?」


話題を逸らす若者。


「おや?その女に力で負けた男にこそ武具を求める必要が有るのですか?」

「・・・・・ならその男に組み敷かれても何も文句は言えんな!!」


若者が剣を取り出す。


「ふん、完全武装していれば丸腰の女に勝てる、と?

随分とまぁ・・・卑小な方ですね」

「能書きは良い、さっさっとそこを退け、俺には時間が無いんだ」

「私にも待っている暇が無いのですよ」

「ならばさっさと始めるか!!」


小屋のドアが開かれる。


「うるせぇぞ!!外でピーピーピーピー!!何騒いでんだ!!」


ヴィンセントが激怒して出て来た。


「ヴィンセント殿・・・」

「おい小娘!!」

「わ、私ですか?」

「お前さんの仕事をやってやってるんだから止めるなり何なりしろよ!!」

「止めましたが・・・」

「ここで止めるな、もっと向こうとかで止めろ

こんな近くで止めて騒がれては迷惑極まる!!」

「そ、そうですか・・・」

「そしてそこの小僧!!」

「俺?」

「今仕事してるんだから来るんじゃねぇよ!!」

「急ぎの仕事なのですよ!!」

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