第72話【中庭にて】

「とりあえず腕利きの騎士達を集めて来た」


大王城の中庭に集められた騎士達。


「この中から勇者ファウストの魔王討伐の旅の供を決める」


騎士達の前で宣言するフォースタス王。


「じゃあこの人で」

「うぇ!?」


ファウストは事も無げに女性騎士の一人を選び肩を叩いた。

女性騎士は驚愕し明らかに取り乱していた。


「勇者殿、彼女は止した方が良いのでは無いでしょうか?」


集められた他の騎士の内の一人が口を挟む。


「いえ、彼女で良いです」

「で、でででででですが勇者様!!わた、わたたた私は!!」

「この通り彼女は焦り易い性格でして」

「ふむ」


ファウストは剣を抜いて女性騎士に何度か斬りつける。

女性騎士は全て剣で受け止めた。


「ななななななな何をなさるんですか!!」

「この通り彼女は俺の攻撃を耐えられる、彼女で良い」

「しかしコミュニケーションが取りづらいでしょう」

「こうして俺の攻撃を正確に防いだんだ、何をするべきかは分かっている

故に彼女で良いです」

「ですが彼女は家柄がこの中でも低く」

「家柄で魔物が殺せます?」

「家柄は大事でしょう!!もしも力や技術のみで判断するのならば

牢屋に捕まっている悪党でも貴方の供が務まる事になりますよ!!」

「それ、良いなぁ」

「はぁ!?」

「王様、牢屋に捕まっている罪人も後で見て回って良いですか?

引き抜ける者が居れば連れて行きたいです」

「構わんぞ?中々良いアイデアを言うではないか」

「・・・・・」


苦虫を噛み潰す様な顔で黙る騎士。


「所で名前は?」

「え?」

「貴女の名前だよ」

「の、ノートゥと言います、よ、よろしくお願いします」

「こちらこそ」

「納得出来ないな・・・」


槍を持った騎士が前に出る。


「スクラッチ殿?」

「この中で一番実力が有るのは私だ

それなのに何故彼女に声をかけたのか納得出来ない」

「それは勇者殿に失礼では無いのか?」

「失礼?勇者殿は実力を測る為にノートゥに剣で斬りつけたのだ

ならばこそ逆もまた然りでは無いのか?」

「逆?」

「つまり勇者殿に実力を売り込む為に我等が挑んでも良いのではないのか?」

「なるほど、それは名案じゃないか」


スクラッチの言葉を快諾するファウスト。


「但し怪我したからと言って文句は言ってくれるなよ?」

「なら勇者殿も死んでも文句は言わない様に」


剣と槍を構えた両雄が激突した。

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