第59話【暗いニュース】

時間は少し前後してジェラールは自分の館に居た。

そして伝令の騎士達から報告を受けていた。


「クレールが蹴り飛ばされた!?一体何が有ったんだ!!」

「そ、それがクレール殿は護衛の騎士達を引き連れて宿屋に向かいました

何でも昨日クレール殿に無礼を働いた女旅人を接収すると言う事で・・・

そうしたらその旅人にクレール殿が

蹴り飛ばされ護衛の騎士達も数名殺害されました」

「それでクレールは大丈夫なのか!?」

「え・・・ええその場から逃げ出す事に成功しました」


騎士を殺された事よりもクレールを心配した主人に内心悪態を吐く騎士。


「良かった・・・直ぐにその宿屋を包囲して賊を捕らえて僕の前に連れて来て」

「え、生け捕りにするおつもりですか?」

「何か問題でも有るの?」

「敵は一太刀で我等を両断する化け物と聞き及んでおります、あまりに危険かと・・・」

「大勢で囲めば大丈夫でしょ、早くして来て」

「は、はい・・・失礼します」


伝令は素早く現場の騎士達に主人の命令を伝える、だが・・・


「今度は包囲を突破されたぁ!?」


続く報告で驚きの叫びを挙げるジェラール。


「は、はい、包囲を突破され既に街の外に向かっております

恐らく外周部に居る騎士達が追跡するかと・・・」

「こちらから追えないの!?」

「馬を出す許可を頂ければ・・・」

「なら早く馬を」

「お待ち下さい領主殿」


ジェラール麾下の騎士団団長、フィリップが現れる。


「フィリップ団長?一体如何したのですか?」

「此度の話は元々騎士団を動かす出費を抑える為の物だった筈・・・

件の旅人を追いかけ騎士達が殺され続けるのは騎士団にとって損失です

もう既に十人に近い犠牲者が出ています、追いかけてまで殺しに行くのは

リスクが高過ぎます」

「女一人に騎士団がかかっても倒せないと!?」

「危険だと言う事です、それに領民達の動きも何やら不穏な様子

組織だって抵抗を始めました」

「君達は人殺しの専門家だろう!!素人に遅れを取ると!?」


伝令の騎士が不機嫌になるもそれを制するフィリップ。


「お怒りは御尤もですがここは御容赦下さい

領民達を殺しては元も子も有りませんので何とか捕らえる方向で行きたいと・・・」

「兎に角!!早くしてくれよ!!ゴーチエ大公に申し訳が立たないからな!!」


そう言って引っ込むジェラール。


「相手は子供だ、まともに相手にするな」


フィリップは若い伝令にそう告げると彼もさっさとその場を去った。

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