第51話【弓を引き絞るエルフ】

森エルフの里の自宅で一人瞑想するマンゲル。


「おい、マンゲル新しい装備を持って来たぜー」


ライヒャーが包みを持ってマンゲルの家にやって来た。


「ライヒャー?何故お前が態々ここに?」

「ちょっと色々聞きたい事が有ってな、これが頼まれていた弓だ」

「うむ」


右手で包みを開ける中に入っていたのは籠手と弓が一体になった様な道具だった。

籠手を装着して着け心地を確かめるマンゲル。


「おぉ、ピッタリだな、弓部分が鉄なのは少々違和感が有るが・・・」

「ウチの職人が作ったんだから悪い品じゃない筈だ、試しに射ってみろ」

「あぁ」


修練場に向かい矢を放つマンゲル。

的から少しずれてしまった。


「ふむ・・・要練習と言った所だな」

「なぁ、マンゲル一つ聞いても良いか?」

「何だ?」

「アンタ片手を無くしてもまだ弓を続けるつもりなのか?」

「あぁ、まだまだ鍛え足りないんだ」

「何でそこまでして続けるんだ?アンタなら一線を引いても充分食っていけるだろう

現役で居たいって言うのは分からなくはねぇ

だが手を喪ってまでやるって言うのは

俺には分からねぇ、ましてや高みを目指そうなんて」

「ふん、馬鹿な事を言う物だな、私がこうやって必死になって自分を鍛えている理由は唯一つ

もう二度と理不尽に屈さない為だ」

「理不尽に屈さない為?」

「そうだ、私が強ければ勇者を助け出せた

いや魔王を倒しファウストが外術に手を染めずに済んだ」

「それは・・・背負い過ぎじゃねぇのか?お前がやらなくても」

「誰かがやるだろって?確かにそうかもしれない、だが私は嫌なんだ

自分でじっとしているのも誰かに負わせるのも・・・あの馬鹿は」

「何だって?」

「何でもない、何れにせよ次にまた魔王が出て来た時の為に私は鍛える事にする

例え手が無くなろうとも、足が無くなろうともだ」

「そうか・・・妬けるな」

「?」


首を傾げるマンゲル。


「お前にそこまで思わせるそのファウストって野郎がよ」

「はっ、あいつは結構無茶振りするからね、合わせるのが大変だったよ

私の人生は今までもこれからも大変でアイツと出遭った事は災難だし

ファウストと旅するのははもう二度とゴメンだ」

「笑いながらいう事かよ」

「はっ、まぁサイッコーに楽しかったのは否定しないさ!!

ライヒャー、今日はもう真っ直ぐ帰るの?」

「いや?森エルフの何か旨いモンでも食ってから帰るつもりだ」

「じゃあ森エルフの果実酒でも呑ませてやるよ私の奢りだ」

「マジで!?ごちになります!!」

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