第47話【失言をするハイエルフ】

「誇り高いエルフが人間とこういう話をするのは本当に癪だが

エルフの未来の為にも君に提案なんだが手を組まないか?」


本気で手を組むつもりがあるのか疑わしくなる文句で勧誘して来るルネ。


「手を組む?何故?貴女は人間嫌いのエルフだと言うのは

今までの話から容易に察せました

その貴女が何故人間の私と手を組みたいと言うのですか?

甚だ疑問です、後ろから刺す為の罠では無いかと疑っています」

「君の疑心は人間らしいな、矮小な体では恐怖も大きいだろう

だが私は懇切丁寧に説明してやろうではないか感謝したまえ」

「それはありがとうございます」

「早い話が錦の御旗だよ」

「は?」


グレートヒェンは馬鹿らしく口を開けて硬直した。


「錦の御旗?エルフの独立戦争の旗印を人間にする?何故?」

「王国に対する不満を焚きつける腹積もりだ」

「王国への不満?」


グレートヒェンが隙だらけのルネの話をここまで話を聞いていたのには訳が有る。

それはマンゲルの狙撃の準備の為の時間稼ぎと自身の体の回復の為である。

先程の外術の攻撃で負傷したグレートヒェンの体は

ファウストの遺体の力でほぼ全快に近い状態に戻って来た。

だが、この次のルネの一言で彼女は策も何も殴り捨て斬りかかる事になる。


「そうさ、国王は勇者を処刑した、これは」


考えるより早くグレートヒェンはルネに剣を突き立てた。

ルネは驚いたが後ろに下がり事無きを得た。


「・・・何だ?君にとって国王は勇者を殺した仇だろう

勇者は間違いなく英雄だ、その英雄を殺す王国を開くとして我等が討つ、これは」

「黙れ」

「・・・国王への忠義立てのつもりか?」

「お前はファウストの死を利用しようとしている、それだけで万死に値する」

「やれやれ・・・仕方ないな

面倒だがマンゲルを捕まえて彼女にこの役目を負わせるとしよう

お前はもう死んで良いぞ、外術【殺伐激越】」


ごうっ、と音が鳴る、グレートヒェンにはこの外術の仕組みが分からない。

音が鳴って回避したのに当たっている。

つまり音が鳴ってからカーブを描いて

自身に命中したのか或はホーミングで飛んで来るのか。

何方にせよグレートヒェンはこの外術は避けられない代物だと判断する。

致命傷にはならないが痛手にはなり避けられない攻撃

ならばとるべき方法は唯一つ。

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