第42話【考えるハイエルフ】

大森城の最上階で高位の神官に横になりながら目を見させるルネ。


「どうだ?治るか?」

「族長・・・これは無理です」

「無理だと!?ハイエルフの辞書にそんな言葉は無い!!」

「ですがこれは治せません・・・」

「この役立たずがッ!!」


起き上がり腕を振り神官の首を刎ねるルネ。


「族長!!ただでさえ少ないハイエルフをそう殺しては一族が成り立ちません!!」


護衛の一人が声を挙げる。


「ふん、既にハイエルフの一族は半分になっている

今更1人2人死のうと変わらない!!」


ルネはここに来る前に自身に従わないエルフを虐殺してきている。

護衛の数が少なかったのも反対した者を殺しているからで本人は半分と言っているが

実際はハイエルフの6割強を殺害しているのだ。


「落ち着いて下さい族長・・・目的を思い出して下さい

少なくなったハイエルフだけでは人間達との戦争には勝てません」

「そうだった・・・他のエルフの一族達と協力せねばならない・・・

族長達への説得も大事だがまずはマンゲルだ、彼女はまだ見つからないのか?」

「お言葉ですが族長、彼女程の実力者が隠れている森を捜索するのは危険過ぎます

各個撃破される危険性が有ります、ここで待機して彼女を待つのが得策かと」

「・・・つまり、お前達はマンゲルを探しに行っていないのか?

捕らえろと族長が命令したのに?」


殺意を込めながら尋ねるルネ。


「わ、分かりました、すぐさま捜索に移ります!!」


ルネに恐怖しその場を去る護衛。


「全く・・・どいつもこいつも・・・」


自身の欠けた視界に悪態を吐きながら、ルネは部屋で横になる。


彼女の人生は特に苦難のある人生ではなかったが

本人からしてみれば屈辱と忍耐の人生だった。

彼女はハイエルフ同士の両親から生まれ育ち

ハイエルフとしての純性を叩き込まれた。

ハイエルフならば普通の事だが彼女は非常にプライドが高く、能力も高かった。

自身に相応しい地位を得る為に努力を重ね

族長の座を勝ち取ったのが遠い昔の事だった。

族長になってから彼女は人間と接する事になった。

そして自身が人間から対等だと思われている事を知った

彼女からすれば耐え難い侮辱、だが人間と正面から戦う術は無い。

それから彼女は他の一族が何度も代替わりをするのを見ながら

ずっとハイエルフの族長の座に座り続けた。

彼女は自身に相応しいと思った場所から動こうとしなかった。

何時か人間と戦いエルフの権利を勝ち取る為に力を蓄えていた。

様々な魔術を修め魔力を高め続けたが先日、偶然拾った肺を体内に入れる事で

外術を修める事が出来た、これ幸いと彼女はハイエルフ達を扇動したが

なびく者は少なかった

彼女は自身に逆らう者達を殺し他のエルフ一族の協力を仰ごうとしたが

彼女にしてみれば不可思議な事に世間一般から見れば当然の如く

他の一族は協力を拒んだ、彼女には理由が分からない、何故と考える。

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