第20話【聖女の策略】

「何処の誰が作ったかもしれない謎の魔道具

それが各地で出回っていると言う情報が秘かに噂されているのよ」

「初耳ね」

「私も半信半疑だった、でも実際にそれを目にしたら・・・ね」

「実際に?」

「ええ、実はここに来る前にその魔道具を持っていた少年と戦ったんだよ

その少年は田舎の戦闘経験の無い子供だった筈なのに・・・

私じゃなければ危なかったでしょう」


目を見開くゾルゲ


「田舎少年が貴女に迫る位強くなる魔道具って一体何なのよ」

「形容し難い物だった、とだけ言っておくよ」

「・・・信じ難いわね」

「実際に見て貰わないとあの凄さは分からないでしょうね・・・

私は王族の、誰かは言えないけどの密命で魔道具の回収を命令されているの」

「回収?」

「一体何に使うか分からないけど、兎に角回収を命じられた

でもあんな物は世に有っても世を乱す事にしかならないからこっそり破壊している」

「良いの、それ?」

「これは内密にしてね、それで本題だけども・・・

その魔道具の一つがこの街に有る、と言う情報をキャッチしたのよ」

「何と」

「本当ですか、それは・・・」


ゾルゲは驚き、ジマーンが訝しむ


「まだ未確定情報だけど魔道具は持ち主の使い道で効力が大きく変わる

そこで何か明らかに異常な奴の情報とかは無いかしら?」

「ならば領主様、以前御話したあやつが怪しいのではないでしょうか?」

「あやつ?」

「ジャベスです、騎士団からも逃げられる脚力を持つ悪童です

報告に有る驚異的な素早さ、恐らくはその魔道具とやらの影響では?」

「可能性は大いに有りますね、伯爵、そのジャベスとやらの居場所は?」

「御案内いたします」

「グレートヒェン、ジマーン殿、双方落ち着いて下さい」


二人を制すゾルゲ


「ゾルゲ、何故止める?」

「話が大きくなった以上、私も出るべきでしょう」

「有難い話だけどなるべく事を公にしたくないのよ」

「分かっている、ならば私もこうしよう

ジマーン殿、そのジャベスとか言う悪童の話は以前にも出ましたね?」

「えぇ、スラム浄化の件で御話しました」

「あの時は実態が掴めず保留としましたが実態が分からなければ意味が無い

そこで私自らが視察に出向く、と言うのは如何でしょうか

勿論、騎士団の護衛を引き連れて」

「なるほど、そういう名目でグレートヒェン殿に助太刀すると言う訳ですね?」

「その通り、グレートヒェンもそれで良いわね?」

「・・・勿論、でもなるべく秘密は守ってね」

「それは大丈夫」

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