第18話【聖女の歓喜】

ゾルゲは今日も執務室で判子を押し続けていた


「はぁ・・・腱鞘炎になりそう」

「少々お休みになられては?」

「冗談ですよ、ジマーン殿」

「は、それは失礼しました」


コンコンと執務室のドアが叩かれた


「領主様、領主様にお会いしたいと言う方がいらっしゃっています」


外から尋ねる声が聞こえる


「一体誰ですか?」

「グレートヒェンと名乗る女性ですが」

「直ぐに御通しして」

「はっ!!」


走り去る音が聞こえ、ジマーンがゾルゲを見る


「お知り合いですかな?」

「ええ、嘗て戦場で共に戦った仲間です」

「ほぅ魔王との戦いの際の?」

「ええ・・・」


嘗ての思い出を想起する様に目を閉ざすゾルゲ


「・・・嘗ての御友人と仲良くするのも良いですが、御仕事をして頂かないと困ります」


不愉快そうにジマーンを見るゾルゲ


「彼女はシュタウフェンに住んでいましてね、態々茶飲み話でもしに来るとは思えません

何かしらの密命を帯びて来ていると私は予想しますが?」

「密命、ですか?」

「ええ、彼女の剣の冴えは貴方より上です」

「魔王討伐の英雄方と比べられては私など・・・」

「そして王国騎士団長の地位を約束されている、そんな女傑が自ら来るとなると・・・」

「・・・何かしらの重大事、と言う訳ですかな?」

「そういう事です」


コンコンと再度執務室のドアが叩かれた


「領主様、グレートヒェン様をお連れしました」

「分かりました、貴方は下がって宜しい」

「はっ」


執務室のドアが開かれ灰色の服に身を包んだグレートヒェンが現れた


「久しぶりね、グレートヒェン、鎧姿じゃない貴女を見るのは初めてね」

「こちらこそ久しぶりねゾルゲ、中々様になっているじゃない」

「止してよ・・・あ、グレートヒェン

こちら大聖城及びドナウエッシンゲンを守護する聖城騎士団団長ジマーン伯爵」

「ジマーンです、どうぞよろしく」


握手の為の手を差し出すジマーン

握り返すグレートヒェン


「よろしく、早速で申し訳ないのですがこれから内密の話しが有るので

席を外して貰っても宜しいですか伯爵?」

「え、それは・・・」

「グレートヒェン、何か重大事が有るのでしょう?」

「ええ、だからなるべく秘密は守りたい」

「その重大事はこの街に関わる事?」

「・・・関わるかもしれない」

「ならば彼もここに居て貴女の話を聞くべきだ、彼はこの街と城を護る騎士団の長

情報共有はしておいて間違いは無いし秘密を漏らす方では無い、そうでしょうジマーン殿?」

「も、勿論です、秘密は厳守します」

「・・・分かった、ならば話しましょう」

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