第17話【聖女の寵愛】

月明りに照らされるスラムの廃教会

そこで屯するストリートチルドレン達

彼等はまさに家族の様にそこで暮らしていた

彼等の全てが孤児と言う訳では無い

中には親がまだ生きていて帰ろうと思えば帰れる子供もいる

だがしかし親からの暴力に耐え切れずに家を出たり

家に帰っても親が居ない、ならば似た様な境遇の者達と過ごしたいと思う子供

様々な子供達がこの廃教会で眠っている


「おーい、帰ったぜー」


少し大人びた様な褐色肌の少年が、大きな袋を抱えて教会に入って来た

大勢の孤児達がわ、っと彼の元に殺到する


「ほれほれ、皆で仲良く喰え喰え」


そう言いながら袋の中身を床に広げる

袋の中身は果物や野菜、干し肉やパン等の食べ物だった


「ありがとうジャベス!!」

「最高だよアンタ!!」

「良いって事よ、んじゃ俺は寝るから」


ジャベスと呼ばれた少年はそう言うと、手をヒラヒラさせながら教会の奥へ向かった


この少年こそ、最近騎士団を悩ませる浮浪児のリーダー、ジャベスで有る

父は先の魔王との戦いに巻き込まれて帰らぬ人となり

母は幼いジャベスを連れて故郷であるこの街に帰り、身売りをしながら生計を立てていたが

客との諍いで殺され、ジャベスは1人この街に取り残される事になった


ジャベスは幼いながらも母を助ける為に路上で働きながら日銭を稼いでいたが

母が客に殺された事から働くのは危険だ、と漠然と感じ、盗み等の悪事を働き

自分と同じ境遇の子供達に食事を分け与えて生活していた

必死に走り回り続けた結果、彼の脚力は目を見張る物となり

スラムの地理にも精通し、大人顔負けの悪童になったのだった


「リーダー、御疲れ」


暗がりから金髪の少年が現れ、ジェベスに水を渡す

彼の名はダニエル、ジェベスの親友で参謀の様な立ち位置の子供である

彼はジェベスとは違い、両親は健在だが家庭内暴力から逃げ出した子供である


「うん、ありがと」


ダニエルが渡した水を一気に飲み干すジェベス


「今日は足の調子は如何だい?」

「すこぶる良いぜ、まるで自分の足じゃねぇみたいだ

まぁ俺の足じゃねぇけどな、まさに聖女様様だな!!」

「聖女様と足は関係無い、とは思うけど一体何だろうなその足は」

「いや聖女様が来てからこの足が来たんだ、俺は聖女様からの送りもんだと思うぜ!!」

「まぁ好きに思ってれば良いと思うよ・・・」

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