魔女と大捜索5
「ルリ!」
ウォルタは大樹の陰から身を乗り出し、構えた魔法銃から銃弾を放った。しかし、それらは、他の蔓によって本体に到達する前にはたき落とされた。
「……ウォルタさん、逃げてください! こんな化け物一人で敵う相手ではありません!」
魔物に捕まったままのルリが叫んだ。
「……いえ、一人じゃないわ」
ウォルタがそう言ったとき、どこからともなく現れた炎の斬撃が、ルリを縛りあげていた蔓を焼き切った。
「待たせたな!」
二人の前に現れたフレイは蔓から解放されたルリを抱きかかえて、地面に着地した。
「大丈夫か?」
「は、はい」
フレイの問いかけに、ルリはポカンとした表情で答えた。
「悪い、ウォルタ、遅くなった!」
フレイはウォルタの方を振り向いて言った。
「ギリギリよ、フレイ」
ウォルタは顔に笑みを浮かべて言った。そして、フレイはルリを魔物から遠ざけると、ウォルタの隣に並び立った。
「あいつが例の魔物か。とんでもない見た目だな」
「本体に私の水魔法の弾丸を打ち込めば一発なんだけど、周りの蔓が邪魔で、それが叶わないわ」
「その蔓、全部、焼き切っちまえばいいんだな!」
「そういうこと」
ウォルタは銃を、フレイは剣を構えた。
「行くわよ!」
「ああ!」
二人は大地を蹴って疾走し、魔物との距離を詰めた。もちろん、その二人目掛けて魔物の蔓が襲い掛かる。
「食らえぇ!」
フレイの振る炎の剣が魔物の蔓を次々と切り倒していった。ウォルタも、フレイをカバーするように、水の弾丸を蔓に浴びせた。しかし、蔓の発生スピードは異常なほどで、いくら切られても、その本体から新しい蔓が発生し、二人に襲い掛かった。
「……やはり、あの蔓、魔法で発生しているだけあって、きりがないわね」
ウォルタが魔物の蔓をかわしながら言った。
「どうするんだよ?」
フレイが次々に発生する蔓を切り裂きながら尋ねた。
「奴の蔓の増殖スピードより早く、本体を丸坊主にするしかないわ。フレイ!」
そう言うとウォルタはフレイに何かを投げ渡した。
「……これは……魔導石か! よし!」
フレイは蔓から一旦距離を取ると、自らが握る魔法剣に刻みこまれた魔法陣に、魔導石の魔法陣を合わせた。
『デュアル』
魔導石から音声が流れ。剣が光に包まれると、光の中からもう一本の剣が現れた。
「二刀流か、これなら!」
フレイは両手に握った魔法剣に魔力を込め、それぞれの刀身に炎を灯すと、魔物目掛けて疾走し、襲い来る蔓を次々に焼き切った。そのスピードは蔓の増殖スピードをはるかに上回り、やがて、魔物本体はただの巨大な火の玉と化した。
「行けるか! ウォルタ!」
フレイは叫んだ。
「ええ!」
ウォルタの構えた魔法銃から放たれた閃光が、巨大な火の玉を貫き、光の粒子へと変えた。
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