魔女と大捜索4

「何、こいつ!」


ウォルタは目の前に突如現れた魔物の巨大さに圧倒され、一歩退いた。


「……私を……追ってきている……魔物です」


ルリが答えた。


「……随分とでかい……けど、火属性の魔物なら、私の相手じゃないわ」


ウォルタはそう言って自分を奮い立たせると、魔物に向けて魔法銃を構え、引き金を引いた。そして、銃から放たれた銃弾は魔物に命中するかと思われた。しかし、その銃弾は魔物の直前で、何かによって、はじかれた。


「……何よ、これ」


ウォルタはあっけにとられた。彼女の放った銃弾をはじいたのは、巨大な植物の蔓だった。しかし、それは別の魔物のものではなく、火の玉の魔物の本体から直接生えているものだった。


「……あれは、私の魔法です」


ルリがウォルタに言った。


「どういう、こ……」


ウォルタがそう言いかけたとき、魔物の蔓が二人を襲った。


「危ない!」


ウォルタはルリを抱きかかえて、魔物の攻撃をかわした。そして、二人は近くの大樹の陰に身を隠した。


「教えてもらえる。あれが、あなたの魔法ってどういうこと?」


ウォルタはルリに尋ねた。


「奴の体をよく見てください、剣が刺さっているはずです」


ウォルタは木の陰から顔を覗かせ、魔物を観察した。すると、魔物の体に一本の剣が刺さっていることを確認した。


「ええ、確かにあるわ。それで?」


「その剣、私のものなんです。私は二日前にギルドのみんなと、この森に魔物退治に来ました。そのとき、突然腰に着けていた剣が消えてしまって。どこかに落としたのだろうかと、探したんですけど見つからなかったんです。そして、魔物の退治が完了し、森を出ようとしたとき、あの火の玉の魔物に襲われたのですが……」


「なぜか、あの魔物の体にあなたの剣が刺さっていたと……」


「はい、そして私と同じ、植物を生み出す魔法を使ってきたんです」


この時ウォルタはフレイと初めて出会った日のことを思い出した。フレイの剣が何ものかによって盗まれたこと、その剣がポカツリーの体に刺さっていたこと、ポカツリーがフレイと同じ炎の魔法を使ってきたことを。


「……ウォルタさん?」


ルリは冷や汗を浮かべたウォルタの顔を覗き込んだ。


「……大丈夫、説明ありがとう」


ウォルタはそう笑顔で答えると、再び魔物の方を見た。そしてその姿に驚愕した。魔物は火の玉の体から、先ほどの巨大な蔓を何十本も辺り一面に伸ばしていたのだった。


(まさか、あの蔓で私たちを探知してる!)


ウォルタがそう思ったとき、背後でルリの声が響いた。


「きゃああ!」


「ルリ!」


ウォルタが振り返ると、ルリは魔物が伸ばした蔓の一本に縛られて捕っていた。魔物はそのまま捕獲したルリを本体の方へ引き寄せた。

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