魔女と大捜索3
「ウォルタ、水晶の様子は?」
魔物を振り切り、再び捜索を開始したフレイはウォルタに尋ねた。
「……まだ、変化はないわ」
ウォルタは手元の水晶を見て答えた。
「しかし、こんなに魔物が多いなんて、ルリは大丈夫かな。ますます心配になって来たよ」
そうこぼしたフレイの表情には焦りが見えていた。
「フレイ、心配するのは結構だけど、焦っては駄目。それに、ルリも私たちと同じ魔女。そう簡単にはやられはしないはずよ」
ウォルタはフレイに希望を持たせるかのようにそう言った。
「……そうだな」
フレイが何とか落ち着きを取り戻したとき、すぐそばの木の上から、数十匹の魔物が飛び降り二人の前に着地した。
「またまた、お出ましね」
ウォルタは水晶を懐にしまい、魔法銃を手に持とうとした。
「いや、ここはウチに任せてくれ」
フレイがウォルタの前に剣を構えて歩み出た。
「どうにも今のウチは、ルリが心配で焦っちまう。ここは冷静なウォルタが捜索の続きをしてくれ」
フレイは振り返るとそう言った。
「……あなたにしては、適切な状況判断ね」
ウォルタは笑みを浮かべて答えた。
「へへ、そうだろ。さあ、先に行ってくれ! 片付いたらすぐに後を追うから!」
「分かったわ。そんなやつら、とっとと倒して追いつきなさい!」
そう言うとウォルタはフレイと別れた。その直後、水晶が微かながら光を発した。
「光った! もう、すぐそこってことね」
ウォルタは光の導きに足早で従った。
「ルリ! ルリ! いたら返事して!」
ウォルタは辺りを見回しながら叫んだ。手の中の水晶は大きく光を発していた。
「おかしいわね、もうずいぶんと近づいたはずだけど……」
ウォルタがそう言いかけたとき、近くの茂みが微かに動いた。そして、茂みの中から一人の緑髪の少女が現れた。
「……私が……ルリ……です」
そう答えた少女は酷く衰弱した様子だった。
「よかった! 無事だったのね!」
ウォルタはそう言って彼女の元へ駆け寄った。
「私はギルド、ヴィネアのウォルタ。あなたの捜索依頼を受けてここに来たの。もう大丈夫よ。私と一緒に街に戻りましょう」
ウォルタは震える彼女の肩を掴んでそう言った。
「……げて」
ルリが何かをつぶやいた。
「えっ?」
ウォルタは彼女と視線を合わせた。
「……逃げてください! ……奴が来ます!」
ルリが振り絞った声を出した次の瞬間、二人の目の前に巨大な火の玉の姿をした魔物が現れた。
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