魔女と大捜索1
「……準備完了」
森の中で一人の少女がつぶやいた。少女の髪型は紫色のサイドテールで、手には一本の剣を持っていた。そして、少女は巨大な火の玉の魔物と対峙していた。
「……実験開始」
そう言うと少女は魔物に近づき、魔物の体に、手に持った剣を突き刺した。
「捜索依頼?」
自宅のテーブルで椅子に座りながら、紅茶を啜ったウォルタが言った。その隣にはフレイが座っている。
「ええ、そうよ。依頼者は私の知り合いのギルド、シトリーのメンバーよ」
向かい合った椅子に座ったウォルタの先輩の魔女、マリーが答えた。
「探し出してほしいのは、同じくシトリーのメンバーの一人、ルリという魔女。私も会ったことがあって、ちょうどあなたと同じくらいの少女ね」
マリーは懐から、取り出した写真をウォルタとフレイに見せた。そこには緑のショートヘアーの少女が写っていた。
「二日前、シトリーのみんなは、グルの森に魔物退治の仕事に行ったの。それで目的の魔物は無事倒したのだけど、その帰り道に突如現れた、別の魔物の攻撃を受けて、彼女たち深手を負った。命からがら、森から脱出した彼女たちだったけど、逃げる途中でメンバーの一人、ルリとはぐれてしまったの」
マリーは話を続けた。
「他のシトリーのみんなはケガで現在入院中。そこで私のギルド、ガープが彼女の捜索依頼を請け負ったの。でも人手は多い方がいいでしょう。あなた達ヴィネアにも協力してもらえないかしら?」
マリーは真剣な面持ちでウォルタとフレイに尋ねた。
「もちろん、やらせていただくわ。ルリって子の安否も気になるしね」
ウォルタが言った。
「こうしちゃいられない! 早く、ルリって人を助けに行かないと!」
そう言うと、フレイは椅子から勢いよく立ち上がった。
「ちょっと、落ち着きなさい! 行くにしても、それなりの準備が必要よ」
ウォルタがフレイの肩を抑えて制した。
「そ、そうだな……」
フレイは再び椅子に着席した。
「ふふ、でもその心意気は頼もしいわ。実際に事態は一刻を争うもの。彼女たちを襲った魔物も気がかりだし、心してかかりましょう」
マリーはそう言うと、二人に両手を差し出した。
「ええ、よろしくね」
「任せとけ!」
二人はその手を握り返した。
「ありがとう。それじゃあ30分後に広場で落ち合いましょう!」
二人にそう告げると、マリーはウォルタの家を後にした。
「フレイ、捜索はマリーの言う通り時間との勝負、気合い入れていくわよ」
「ウチはいつでも気合十分、心配いらないよ」
二人は仕事の準備に取り掛かった。
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