121  二人のバラガキⅧ

 ――――これじゃないな。他の手帳か?



 デミトロフは、手帳を閉じ、棚に戻す。そして、違う手帳を引き出す。



 それを何十回も繰り返しながらどこに重要な事が書いてあるのか、読んでいくたびに時間が過ぎていく。






「ダメだぁああああああああ‼ 何も分からん!」



 デミトロフは、手帳を床に投げ捨て、仰向けで床に寝転がる。



「どこに書いてあるのだ!」



 と、時間が経ち、足の痺れを切らして、デミトロフは探すのを一時的止めた。



 どこを探してもエミリーが言っていたことがどこにも載っていないのだ。



 ――――確かにこの学園に何かあるとすれば、魔法と錬金術の融合。



 ――――普通は考えられない事であるが、それが一番ヒントに近い。



 ――――それにそれが分かったところで、本当の真理に触れなければ無理だ。



 デミトロフは、目をつぶり、頭を少しずつ冷やしていく。



「冷たっ‼」



 額に何か冷たいものが当たり、びっくりしてデミトロフは起き上がる。



「何寝ようとしているんですか?」



 エミリーが、横に座って、氷袋を持っていた。



「はい。頼まれたコーヒーです。目を覚ましてください」



 と、エミリーはデミトロフにコーヒーを渡す。



「あ、ありがとう……」



 受け取って、ゆっくりと口の中へと入れる。



「それで見つかりましたか?」



「いや、見つからん。お前、一体どこに書いておいたんだ?」



「その手帳のどかには書いてありますよ。確か初等部五年から六年に上がる時だったと思います」



「それを先に言え!」



 デミトロフは、叫んだ。



「すみません。言うのを忘れていました。それで、掃除中に思い出したんですが……」



「なんだ?」



「確か、この学校の卒業生にかつて魔法と錬金術の天才がいたという噂をご存知ですか?」



「それって二人か?」



「一人です」



「一人だと?」

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