096 若き魔導士の追憶Ⅸ
「さあ、つべこべ言わずに行きますよ。それとも何かありますか?」
図書館の外に出ると、エミリーは後ろを振り向き見下ろす。
「ああ、あるさ」
「そうですか。一体何を言い出すんですか?」
「今度の休日、演習場で俺と戦え!」
デミトロフはエミリーに決闘を申し込んだ。
「分かりました。それで内容はどうするんです?」
「朝の九時。武器は木刀、ペイント銃、人を殺さない武器だ。つまり鋭利の武器を禁ずる。そして、俺の錬金術も同じだ。フィールドは市街地A」
「面白いですね。私に錬金術なしで挑むというわけですか。それで地形を利用すれば私に勝てると?」
「ああ、そうだ。俺はこれでもお前には及ばないが、地形を利用すればそれは五分五分になるだろ?」
デミトロフはニヤッと、笑う。
「ふふふ……」
「何がおかしい?」
エミリーが笑う。
「いや、なんでもありません。分かりました。それではジョンの言う通りにしましょう。それで勝利者には?」
「俺の場合は、今後一切、俺がやっている途中で邪魔をしない事だ」
「いいでしょう。それじゃあ、私が買った場合は私のお願い事を一つ聞いてもらいますね」
「いいだろう」
デミトロフはエミリーの意見もしっかりと聞き頷いた。
この二人が戦うのは今に始まったことではない。
幼き頃からエミリーの連戦連勝。
それはボードゲームも入る。
「それじゃあ、早く帰りますよ」
エミリーは立ち上がったデミトロフの手を握って歩き出す。
「お、おい! いくらなんでもここまですることはないだろ!」
「いいえ、これはこれ、あれはあれですから……」
「面倒くせぇ女……」
「誉め言葉として受け取っておきます」
二人は一緒に暮らしている寮へと急いで戻る。
太陽が西の空へと沈みつつあり、夜は魔法使いや魔女の世界へと変貌する。
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