095 若き魔導士の追憶Ⅷ
オレンジ色の夕日に包まれたオストワール魔法学校は、終礼の鐘が鳴った。
ここ魔法学校第一図書館の中にもオレンジ色の光が射し込んでいる。
机に向かって、多くの錬金術の本を読んでいるデミトロフの姿があった。
「ジョン、もうそろそろ帰りませんか?」
「ああ……」
エミリーが小声でデミトロフに話しかけるが、本に集中しており周りを気にしていない。
図書館にこもるたびに図書館にある本全てを集中が切れるまで読み漁っていた。
「ジョン。今すぐに片づけてください。帰りますよ」
「ああ、後もう少しだけ……」
「いいえ、今すぐに片づけてください。寮に戻りますよ」
エミリーはそう言って勝手に片づけ始める。
山のように積み上げられた錬金術の本を一冊ずつ本棚に直していき、帰る準備を始める。
それでも彼女が片付けているのにもかかわらず、デミトロフは悠々と今読んでいる本の文字を見ながら、ブツブツと呟いていた。
「そうか……ここは分解すればいいんだな……」
デミトロフが読んでいる本を残して、全ての本を戻し終えたエミリーが最後の一冊を取り上げる。
「ちょっ、何をするんだ! あと少しで読み終えたんだぞ!」
取り上げられたデミトロフが、エミリーに文句を言う。
「あと少しがどれだけ長いのか知っているんですか? さあ、帰りますよ」
エミリーは、制服の襟を掴んでデミトロフを引きずりながら図書館を出ようとする。
「待てって! こんな公共の場でこんな事をするなと言っているだろ!」
「じゃあ、何回も言うことを聞かないのはどこの誰ですか?」
「自分で歩くからその手を離せ!」
「離したら次はどこに行くか分からないでしょ」
「俺は猫と一緒か!」
「一緒です! いつも目を離したすきにいなくなるんじゃないですか」
引きずりながら二人は言い合いになる。
「うっ……。それは……」
「いつも思っていますけど、もう少し態度を改めるべきですよ。後始末に追われるのは誰だと思っているのですか?」
「だったら、俺一人でやる」
「それが出来ないから私がいるんでしょ!」
「なんだと!」
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