091  若き魔導士の追憶Ⅳ

 デミトロフとエミリーは食券を買い、食堂のカウンターに並ぶ。



 デミトロフは中等部食堂の中で一番高い日替わり定食Aセット。



 エミリーは日替わり定食のBセットを選んでいた。



 二人は食堂のおばちゃんからそれぞれ定食セットを受け取ると、エミリーが予約しておいた席へと案内する。



 食堂の窓側にある二人用の円状のテーブルに、椅子が二脚置いてある。



 だが、そこには一人の男子生徒が堂々と食事をしていた。



「おい、そこは予約席だぞ。そこをすぐに明け渡せ」



 デミトロフは、その男子生徒に話しかけた。



 昼間から堂々と太いステーキを食べていた。



「そうだったのか。気がつかなかった。でも、予約席ってありなのか?」



「なに?」



「だってそうだろ? ここの食堂は学生でいっぱいだ。それに席の余裕などあるわけがない。なのにお前らは権力というのを利用し、座りたい人がいるのに予約といったズルを犯しているのに気づかないのか?」



「それがどうした。権力がある者は上に立つ。それは普通だろ?」



「いいや、普通じゃない。ここはそれぞれがそれぞれの道を学ぶ場所だ。ここにはそれぞれの国から学ぶために来ている人間がいる。こんなちっぽけな権利のために俺は、ひれ伏す事なんて御免だね」



 少年は、ナイフとフォークで切った肉を口の中に入れる。



「エミリー」



「はい」



「なぁ、どっちの意見が正当なのか。お前には分かるか?」



「そうですね。どっちもどっちといった所でしょうか」



 エミリーは面倒そうにデミトロフの問いに淡々と答える。



「そうか。お前はそう言うのだな」



「はい。どっちの言い分も正しい上に、どっちの言い分も間違っていますので……」



 エミリーは早く昼食を食べたそうに待っている。



 だが、そう簡単にこんな事が終わるはずがない。



 デミトロフがまず、弾き上がることはあり得ないのだ。



「ジョン。私、早く食べたいのですが……」



「い・や・だ! 俺はこいつと一緒に食べたくねぇ!」



「そんなわがまま言わないでください。椅子は私がもう一つ持ってきますから私の席で先に食べていて下さい」

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