　女は瞳孔が見えるくらい目を大きく開き、裕也を睨みつける。

「姉さん、痛い……」

　そう言うと、女は服から手を放して、隣のベットに座った。

　乱れた服を直し、破壊された扉を持って、元の位置に戻し、錬金術で修復した。

「ふぅ……。治ったか……」

　裕也は開閉の確認をしっかりとすると、女の向かい側のベットに座りに何も言わずにただ俯いた。

「…………」

　会話が始まらない。

　女は、ウジウジしている裕也を見て、腹を立てている寸前になっていた。

　目の死んでいる裕也は、目の前に知っている女が来ても何も言わない。

　不穏な空気が流れたまま、女が話を切り出す。

「おい、ユウヤ。一週間ずっと何をしていた？」

「ずっと部屋の中にいた……」

「そうか……。大体の事はお前を見れば分かる。辛かっただろうな……」

「…………」

　裕也は黙ったまま小さく頷く。

「人の命は一度咲いたら少しずつゆっくりと枯れていく。それは一瞬か、それとも最後まで使い切るのか。それは誰も分からない。師匠が昔、そう言っていたわ」

「ああ……。リサ姉はもし、多くの人が犠牲になろうとしてもそれを犯そうとする人間を簡単に殺す事ってできるか？」

　裕也はようやく自分の意思で話し始めた。

　裕也が口にした『リサ』というは、彼女の名前である。

　本名　リサ・ハレプ。

　金髪長髪であり、歳は二十三歳。

　三年程前、裕也が弟子入りした師の元にいた姉弟子である。

　元軍人であり、今は普通の一般市民の魔導士である。

　裕也と同じ属性の火魔法を使い、体術では一度も裕也に負けたことが無い。

「そうだな。確かに人の命は大切だ。だが、それは人によっては違う考え方にもなる。お前が殺せないとしても他の奴は殺すことは出来る。この世を生き抜くためには、違った思考を持つ人間が自分の正義に従っている。それは曲げられないんだろう。私は昔、多くの人間を殺したことがあるって言ったことがあるな」

「ああ、よく覚えているよ……」

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