第6章  咎人の罪

071  咎人の罪Ⅰ

 二日後――――



 裕也が生贄になる日である。



 今朝からマーロスは儀式の準備のために色々と動いていた。



 教会内に潜入している総司と三久は同じ部屋に泊まっていた。



「さて、今日の夜、実行に移されるわけだが儀式が始まる前に現場を取り押さえれば俺たちの勝ち。だが、そう簡単にいくとは思っていない。今回は本当に将官クラス人間と佐官クラスの人間が来ることになっているらしい。その前に片を付けなければならない」



「はい。それでこれからの行動はどうするのですか?」



 三久は軍服を着て、向かい側の椅子に座っている総司にこの後の事について訊く。



「まずは供物となる裕也、賢者の石、黒魔法。この三原則を……」



 総司は急に話を止める。



 口を開いたまま手で覆いかぶさり、黙りだす。



 それを見ていた三久は総司の異変に気づき、手を差し伸べようとする。



「どうしたのですか?」



「いや、何でもない……。ただ、おかしいと思って……」



「おかしい?」



「この世の真理にたどり着くための条件とは一体何だ?」



「錬金術師が求める『賢者の石』、魔導士が持ってはならざる万物、黒魔法と白魔法。その三つが均衡状態にこの平行線の世界にあるからこそ、この三原則が成り立っているんですよね」



 三久は総司の質問に悠々と答える。



「そうだ。だが、なぜ裕也を白魔法の代わりにいれた?」



「…………」



「なんで今まで気づかなかったんだ。白魔法はつまり無とする魔法。簡単に解釈すれば、裕也の魔法、錬金術を無に戻せばいい。そうすれば、その代わりとなる」



「でも、それは非原則になるじゃないですか! 人は魔力を持っていたとしても魔法を使えなくするなんて、それでなんで白魔法の代わりになるのです」



「それこそが深入りした結果に過ぎないのかもしれない」



「え?」



 総司は頭を抱える。



「もし……もしもだ。これが失敗ではなく、半分の確率で成功したとするならば、その先の未来が分かるのかもしれない……」

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