019  三つ子の奴隷Ⅵ

「一年前? 俺が来たのはつい最近だぞ!」



「そうか。あんた、知らないんだ。この世界は時期が違えど、このアプリを利用している人のほとんどはこの世界に連れてこられそして、この世界自体が現実になっているのよ。だから、血も本物だし、それに死ぬ人は死ぬ。全てがほとんど現実と変わらないのよ」



 一花が不服そうに話した。



 そうか、もう、この世界で生きていくしかできないのか……。



「それでなんでお前たちは奴隷になっていたんだ? 普通、冒険者だったら金を稼いでいて装備も整っているだろ? おかしくないか?」



「それは……」



「何と言うか、私達は三人揃って売られたんですよ。仲間によってね……。全ての所持品はすべて失いましたし、何も残っていませんよ」



 三久が憎しみと悲しみを同時に顔に表し、目から涙がこぼれ落ちるのが分かった。



「そういうことか……」



「そういう事というのは?」



「つまり、お前たちの服や装備、金が目的だったんだろうよ。それが終われば、お前たち三つ子は奴隷としてでも高い金額で取引できるだろうからな……」



「あなたもそれが目的で?」



 三久が俺を警戒しながら聞いてくる。



「————んなわけないだろ? だったらなんで俺が二億なんて出すんだよ……。それにお前たちが俺に礼をする事なんてない。ただ、溜まりに溜まった金を使い果たしたかっただけであって、それ以外の目的などない。だから、これを食べ終わったらお前たちに金を渡すから静かにこの世界で暮らしていくんだな」



「どうして、そこまで見知らぬ私たちに対してそんな事ができるのですか? 得にはならないでしょう」



 三久はそんな俺の言葉を聞いて、怒りを買ったのか。なぜか、説教を始める。



 だが、その前に料理がテーブルに並び、三人のお腹から音が鳴り、三久は頬を赤らめながら静かに席に座る。



「さあ、どうしてかな? ただ、俺がしたかったようにしただけだ。それに俺は一人で行動する方がいいんだよ」



「そうですか……。でしたら、私達があなたと一緒に行動しても構いませんよね? 桜井君」



 野菜を口の中へと入れる。



「はぁ? 言っておくが俺は旅に出るつもりでそれにここにずっといるつもりなんてないんだぞ。他の奴の面倒なんて見れるわけがない」



「でしたら、私達は何を言われようとも勝手について行くだけです。二人とも異論はありませんよね?」

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