わが身ひとつの 6

「いい加減にしねぇと、2人共置いてくぞ」


 殺すぞ、と言わんばかりの勢いでドスを利かせる。


 ――もうどっちでもいいから早く乗れってェェェーッ!


 俺の心の叫びが聞こえたのか、俺に視線を向けた祐志が渋々といった様子で助手席に座った。俺の隣には竹内が乗り込む。 


「祐志は、北高に入ったんだって?」


 車が走り出すと、坂城先輩が口を開いた。「まあ」と答えた祐志の声に被せるようにして、竹内が「県立っすよ」と付け加える。


「スゲェじゃん」


 坂城先輩が微笑むと、「ひろッチもスゲー」と竹内がこっちを向いた。


「坂城先輩こそ、大学行ってるじゃないですか」


「俺は、高校入ってから結構マジメに勉強したぞ」


 2人の会話に竹内がこちらを見たままでケタケタと笑う。


「みんなスゲェ~な」


 なんだかその笑顔が寂しく見えて、俺は思わず口にしていた。


「――竹内もスゲェじゃん」


「へ?」


 見返してきた竹内に、「スゲェいい奴」とこの前会った時の事を思い出しながら言う。


「なんだ、それ?」


 不思議そうに言って、また笑う。


 笑って体を揺らす竹内の左耳で、小さな石が、キラキラと輝いていた。  

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