わが身ひとつの 5
「よろしくお願いします」
俺が頭を下げると、先輩は笑みを深くした。
「じゃ、行くか」
ポンと俺の肩に手を置いて、祐志と竹内を見渡す。先輩が運転席に回ってドアを開けると、竹内が後部座席のドアを開けた。
「どうぞ、ひろッチ」
サンキュ、と礼を言うと、竹内は無邪気に嬉しそうな笑顔を見せる。続けて乗り込もうとする祐志を、竹内は「ちょっとちょっと」と止めた。
「ユウは前。ひろッチは俺と乗るの」
「はぁッ?」
怪訝そうに、祐志が眉を寄せる。
「なんでだよ」
――同感だ。なんでだよ?
「ユウは~、坂城先輩と会うのスッゲー久しぶりだろ? 俺は~、この前電話で話したし、ユウ達を待ってる間もしゃべってたからいいの。ひろッチとしゃべる」
そう言って乗り込んでこようとする竹内の肩を、今度は祐志が掴んで止めた。
「お前が助手席に乗れ」
「え~。ヤダ」
「なんでだよ」
「そっちこそ、なんでだよ」
「――おい」
いつまでも続きそうな2人の言い合いに、低い声が割って入る。前を見ると、運転席の背もたれに肘を付いて振り向いた坂城先輩が、2 人に目を剥いていた。
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