心も知らず 13

「そっ、思い出した。お前と会った時。あれは、手のデッサン提出しに行った帰りだ」


 微笑む祐志に、俺は慌てて駆け寄った。


「じゃあさ、じゃあさ。先生達の話で盛り上がった事も、思い出した?」


「勿論。それにあの時も、お前が俺の耳触った事も」


「え?」


「いきなり『綺麗なピアスだなー』とかなんとか言いながら触ったんだぜ。言っとくけど、第一印象は最悪だ」


「あ、あ、そー言うならなー。俺次の日、『話の続きで盛り上がろうと思って、今日楽しみに学校来たんだぜ』って朝1番に話しかけたらお前、なんて言ったと思う? 『今日は気分悪ィ』とかダルそうに言って、ホントに2時限目終わったら早退したんだぜ。こっちのテンションも下がるっての!」


「はは……。そっちは忘れた」


 ほんとにこいつは――。


 不意をついて、俺にやさしさをくれたりするんだ。


 あの夕焼けの時から判ってた。俺とこいつは『違う人種』だって。俺なんか友達としての対象に、全然入ってなかったって。


 ――それでも。

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