心も知らず 2

「いや無理。どー描いていいのかも理解不能」


 顔の前で手を振った俺に、「そうだろうな」というように頷いて、大城は行ってしまった。


「取りあえず、描いてみて」


 という言葉だけを残して。


「なあ、なあ、なんで俺だけ? みんな違うモン描いてんのに! 俺も祐志みたいに布と果物でも描きてぇ~」


「お前、油絵嫌いじゃん」


 呆れたようにチラリとこちらに目を向けて、祐志が言う。


「だってさ~」


「油絵も嫌いだし、この前描いた水彩画はしばらく描きたくないって言うし、大城が薦めた日本画も乗り気じゃない」


 筆を動かしながらの祐志の台詞に、「だって~」と言葉を割り込ませた。


「油絵はさぁー、どこが終わりなのかも判んないんだよなぁ。どこまででも描けるって言うかさぁ、どこまで描いてもスッキリしないって言うか……。水彩画は――しばらくもういいや」


 飽きたし。


「日本画は?」


「道具一式買うトコからするって言うんだぜ。他にも日本画やりてぇって奴がいんならまだしも――」


「ま、今のままじゃお前の『飽きた』の一言で、全部無駄になり兼ねないからな」

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