第53話 ミクリ
ミクリが、神様の子供。
特にそれに対する感情は出てこなかった。
へえ、そうなんだ、ただそれだけ。
でも確かに言われてみれば、あの独特の雰囲気や白髪の髪も、神の子供と言えば説明がつく。
「神様の子供なのに役職は貴族じゃないんですね」
「うあー、それね」
星也の質問に、夏樹は困ったようにはにかむと口を開いた。
「もともと神の仲間入りを果たすか貴族になるかのどちらかだったんだよ。でもその、ちょうど決まるって時期に僕がこの世界に来てね? そのまあ、僕は天才だったからミクリよりも色々才があって……」
「まさかミクリが幹部になったのって夏樹のせい?」
「そうなるよね……。僕が貴族になって、ただの死人よりも力がないとはどういうことだーって、ランク下げられて幹部になったってわけ。だから僕、ミクリとはちょっと気まずい関係にあるんだよね」
何てことをしたんだこの人は。
それにしてもあの基本無表情な人にそんな過去があったとは信じがたい。
いや、そういう過去があったから無表情になったともいえるかもしれないが、あれは素の無表情に見える。
たまに、たまーに笑うし。あれが本物の性格なのだろう。
「ああ、それとね。ミクリは一応神様の子供だからフェイトディザスタアでも死なないんだけど」
「そうなんだ」
「うん。でね、ミクリがけっこう春樹のことを気に入ってるんだよ」
「え、俺?」
「そうそう。だからもしかしたら助けてくれるかも、みたいな」
「え」
驚きの展開に思わず変な声が出てしまう。
「珍しいんだよ。ミクリがあんなに人に興味を持つなんて。いつもは今日も馬鹿っぽいやつがこっちに来たって言ってるだけなのに」
「さすが春樹君だね。すごいや」
「だからまあ、まだ望みはあるかな」
小さな窓から夕焼けの光が一筋入ってきていた。
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