第41話 就寝

「へえ。シンジロウさんの部屋と本当に近いね。あと春樹が生きているときからどんな部屋かは知ってたけど、こうしてみるとザ・男子って感じの部屋だね」

「それ星也にも言われた気がする……」

「あ、やっぱり?」

 夏樹はそう言うと、俺の許可も取らずにベッドの上にボフンと座った。

「わあー、ふかふかだ! 中々いい布団使わせてもらってたんだねえ」

「まあな」

 俺も夏樹の隣に腰を下ろす。

「で、話って?」

「え?」

「ほら、シンジロウさんの部屋から出るときに行ってただろ。春樹と話したいことがあるんで、みたいなこと」

「ああ、あれね。信じてたんだ?」

「は? どういうことだよ」

「いやあ、まあ簡単に言うと。あれ口実。別にシンジロウさん達が苦手わけでもないし、むしろ好きなんだけど、今日は時間も遅いし早く春樹の部屋に行きたかったから嘘つきました! すみませんねえ」

「……」

 何だろう。とても恥ずかしい。

 なんか俺がすごい馬鹿みたいだ。

「いやあ、純粋なのは良いと思うよ?」

 夏樹はそう言うと、俺を巻き込む形でベッドにダイブ、そして俺の頭をわしゃわしゃと撫でてきた。

「ちょ、やめろ」

 ふわりと夏樹の香りが鼻に入ってきた。

「近い、苦しい、離れろよ」

「いいじゃーん」

「……」

 身体を動かして抵抗しても、夏樹は一向に離れる気配がない。

 もう諦めよう。いずれ離れるだろ。

 そう考えてそのままされるがままにされること数分。

 やっと頭をなでる手が止まった。

 まだ夏樹の身体は俺の上にあるのだけれど。

「重い。よけて」

 そう言ってみるも、返事はない。

「まさかお前……」

 ごろり、強引に夏樹を俺の上からおろして顔を確認。

 すると俺の予想通り、すやすやと眠りについていた。

「はあ……」

 小さなため息を1つ。

 でもなんだか、可愛いものだ。

 夏樹は喋り方は大人っぽいが、見た目は中1のそれ。

 つまり俺には、割と顔が整っているけれど幼い中1の男子が眠っているようにしか見えないのだ。

 ぱっとみ可愛いらしく眠っている夏樹を、床におろすわけにもいかない。

 俺は苦労して夏樹をベッドの中に入れ、少し硬い机の椅子の上で眠りについた。


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