第212話 サプライズ(2)

なんで、知っているんだ????



その疑問を斯波が口にする前に、


「あっ!! もう指輪なんかもしちゃってる! 斯波さんが指輪なんかしてるの新鮮~~!」


八神に指摘され、


「は・・」


斯波はもう何も言えなくなってしまった。


「ロンドン土産ちゃうの~~? もう、ほんま普段黙ってるくせにやることキザ~~、」


志藤はタバコをふかしながら、半ばやっかみのように言い放った。


「ほんまや! かわいーデザイン! やっぱりロンドンは違うよね~、」


萌香の手を取って、南もはやし立てた。



二人がまだまだ呆然としている中、


「あっ! 出遅れたっ!!」


真尋まで飛び込んできた。



「ま、真尋??」


斯波が驚いた。



「だから! 8時集合だよって言うたやろ!」


南がジロっと彼を睨んだ。



「寝坊してさあ! あ~~、もうサプライズ終わっちゃった? 斯波っちの驚く顔を写真に撮ろうと思って、一眼レフまで持ってきたのに!」


真尋は心底悔しそうだった。


「萌ちゃん! おめでと! ほんっと、ついに斯波っちも決心したかあって、おれも嬉しかったよ!」


真尋は萌香の手を取って、ひとりはしゃいだ。



「で、いつ?」


彼の質問に



「は?」


萌香はやっと言葉を発することができた。



「だから! いつ生まれるの? 子供!」


「はっ!?」



二人は同時に疑問符を発して固まった。



「ほんまにも~、わかってたらさあ、萌ちゃんに無理させへんかったのに! 志藤ちゃんやってなあ、」


南も言った。


「ほんまになあ。 おれは悲しかったで。 栗栖! せめておれにだけは打ち明けて欲しかったのに!」


志藤もオーバーに彼女ににじり寄る。


「ほ、本部長??」


萌香は思わずのけぞった。


「で、いつ?」


と、また訊かれて、ようやくハッとして





「私! 妊娠してませんけど・・」


萌香は言った。



「へ???」


今度はみんなが固まった。


「・・子供は、できていませんが・・」



しばしの沈黙の後、


「ちょっと、だれ~? 萌ちゃんが妊娠したから結婚したとか言ったんは~、」


南が苦々しそうに言った。


「加瀬だろ?」


八神が夏希を睨んだ。


「えっ?? あたし? って! や、いきなり結婚なんて、ひょっとして、そうかも~、とかは言いましたけど! 断言してないじゃなですか!」


夏希は全力で否定した。


「八神が真尋さんとかに言いふらすから、」


玉田が八神を小突く、


「え! おれスか??」


「ったく! ほんまにいい加減やな!」


志藤も憤慨した。



収拾つかなくなったこの場で、斯波はようやく自分を取り戻し、


「あ・・あのっ!」


言葉を発して、みんなが注目した。



しかし、一気に視線が集まり、元々人前で話すのが苦手な彼は、


「・・あー・・っと、」


勢いが尻すぼみになっていく。


「もう、斯波ちゃんがはっきりしないから! ちゃんと説明してよ!」


南から責任を転嫁され、


「は、はっきりって・・」


斯波はうろたえた。


「清四郎さん、」


萌香にも促されて、




「・・・あの・・みんなに・・いろいろ心配をかけましたけど。 おれたち・・結婚することにして、」



小さな声で言った。


そして、覚悟を決めたように顔を上げて



「・・結婚、します。 べ、別に子供ができたからってわけじゃなくて。 おれ自身、なんか一区切りついた気がして。 ようやく自信を持って、彼女と家庭を持とうと決心がつきました。 今までと変わらないとは思いますけど、これからは二人で頑張っていきます。」



彼なりの必死な言葉だった。


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