第82話 儚く(1)
先のことなど
とても
考えられない
今、目の前にいる彼女を
自分のものにしたくて。
こうすることが
誰を
幸せにするのか。
何の
解決になるのか。
わからない。
いや
考えたくない。
薄暗い寝室で
夢中で二人は抱き合った。
彼女の白い肌が
汗ばむほど
熱く
激しく。
時折、泣きそうな声で
喘ぐ彼女の声に
興奮を抑えきれない自分。
「萌・・」
彼女の名を夢中で口にして。
もちろん
女性を抱くのは初めてではないが。
久しぶりだったので、ずっとドキドキしっぱなしだった。
細い身体に似つかわしくない
彼女の豊かな乳房に触れる
これまで経験した女性たちよりも
彼女の身体はあまりにも
感じやすくて。
それにも
どうしようもなく興奮してしまう。
そして
ようやくひとつになったとき
萌香は悦びの声をあげながらも、涙を止めることができなかった。
「・・どう・・したの・・」
息を切らせながら彼女の頬に伝わる涙を手で拭ってやった。
「・・幸せ。 幸せって・・ほんまにあったんや、」
優しい京都弁で涙を流し続ける彼女が
本当に愛しくて。
二度と
離したくない
斯波は彼女を抱え込むようにくちづけた。
もう
どれだけの時間
こうして
身体を併せたのか。
この夜が
永遠に続けばいい
萌香は彼の手に自分の指を絡ませた。
辺りが薄明るくなったころ
萌香はそっと起き上がった。
斯波は
うつぶせになってまだ眠っている。
その寝顔を見て
ふっと微笑む。
そして
そっとベッドを出ようとしたとき、いきなり腕を掴まれた。
「きゃっ!」
驚いて見ると、斯波は眠そうに目だけ開けて、
「・・黙って・・帰ろうとしただろ・・」
と言った。
萌香は優しく微笑んで、
「もう朝です。 一度部屋に戻ります。」
と言った。
斯波はのっそりと体を起こして、萌香に唇を寄せ
「・・あとで・・一緒に出かけよう。」
と言った。
「ちょっと仕度に時間がかかるかもしれません。 斯波さんは今日は朝イチの会議ですから。 先に行っていてください、」
萌香は穏やかな表情で
そう言った。
「ん・・」
斯波は優しい目で頷いた。
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