第74話 迷路(4)

「・・それは・・いったいなんの解決になるって言うんですか・・」


斯波も志藤と同じことを考えていた。


「うん・・解決にはならないかもしれへん。 あの男はどこまでも栗栖を追ってくるやろな。 でも、このままじゃ、彼女救われへんやろ、」


志藤はぐっと焼酎を飲み干してグラスを空にした。


「救われる・・?」


「たぶん。 あいつほんまに男を好きになったことないと思うねん。 ウソみたいやろけど。 愛し方だって、きっと何もわからない。 おまえのこと好きやって思う気持ちがあったら・・それはあいつにとって人生初めての気持ちやんか。 あんなに若くてキレイで。 人生これからの彼女がな・・あんまりにも悲しすぎると思わない? 栗栖にあの男を振り切る力は・・今はない。 だけどそうやっておまえが愛してやることによってな。 彼女は救われるんちゃうかなあって。」


志藤の言葉を黙って聞いていた。



「おまえは・・もし・・もし、あいつの過去を知ったら耐えられる?」



唐突に言われて、


「え、」


斯波は即答できなかった。



「もう・・全て。 全てな。 わかってやってあいつを包み込む勇気、ある?」


その


『過去』がなんなのか


わからないっていうのに・・



斯波は一瞬、そう思ったが



「・・あいつを。 守ってやりたい。 その気持ちはもう、変わることはないと思います、」



自然にその言葉を口にしていた。



この数日


彼女のことばかりを考える。


彼女のことを思うと


平常心でいられない自分もわかっている。



きっと


このまま


彼女を助けてやれない自分に悶々として


悩み、苦しんでいくんだろう。



それを考えたら


やっぱり


何があっても


彼女を守ってやりたい。




志藤はふっとため息をつき、


「ま、飲んじゃえ。 もう、嫌なことは忘れて。」


彼のグラスに焼酎を注いだ。



どうにも


ならへんのやろか。


他人が思うより


人の気持ちは


複雑で


思うようにいかないのが


人生で。



おれだって


痛いくらい


そんなんわかってる。



おれよりも


こいつは遥かに真面目やから。


もう


栗栖を助けることで


頭がいっぱいで。


決して幸せな家庭環境で育ってこなかった


こいつは


栗栖と同じで


人を幸せにする


方法も


自分が幸せになる方法も



きっと


知らない。





結局


無茶飲みをした斯波は


ツブれてしまい。


彼のマンションまで志藤は送った。




キーを渡され、部屋まで連れて行くハメになってしまった。



そういや


こいつんトコ


初めて来た。


ほんまにプライベート秘密主義やし。




志藤は彼を何とかベッドに寝かせた後、彼の部屋を見回してしまった。




それにしても・・

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