千載一遇の童貞卒業チャンス、逃すわけにはいかない
「そういうのも含めて、やめろって言ってんのよ!」
「でもデネブちゃんが勝手に決めてもねえ。男女の気持ちはお互いの自由なんだし、ねえ?」
そーだそーだ。ソアラからなまめかしい視線を送られて俺はこくこくとうなずく。ぎろりとデネブににらまれ俺は一瞬で正座した。
「勇者様もあたしの考えに賛成ですよね?」
もちろん反対です。千載一遇の童貞卒業チャンスを逃すわけにはいかな「賛成ですよね?」
繰り返される問い。いつものかわいらしいトーンではなくドスのきいた地声、特に疑問形のていを借りた命令形の「ね?」が、俺に選択権などないことを示していた。再びこくこくと首を振る。
「アルくん、それでも勇者? リーダーっぽくないよ」んなこと言われてもデネブこえーし。「そっかー、私とイイコトしたくないんだー」したい! したいですとも!
「勇者様?」
まじ☆ステの先で手のひらをぽんぽん叩きながら、有無を言わせない形相で従者は問う、というか忖度を迫る。意向にそわなければ、回復かダメージかの「まじステチャレンジ」の危機にまたさらされる。二分の一の確率で死ぬとか勘弁してくれ。
「……赤き火の精霊よ、我が前にその加護を……」
「えっ、ちょっとなんで火のやつ唱えてんですかデネブさんっ!?」
「いえ、早くお答えにならないので」
ので、じゃねえよっ、なに二分の一から百パーに引き上げようとしてんだよっ!
「わかった、わかった! おまえの言うとおりパーティー内恋愛禁止っ、セクロス禁止にするからっ」
「では法度破りは死罪で」新撰組かよ。「いいですね?(威圧)」「はいっ!!」
俺は勇者パーティーのリーダーとしての務め、首を縦に動かすだけのかんたんなおしごとです、を粛々と果たした。
俺の知らないうちに、勇者ご一行様の間では下剋上が起きていたらしい。リーダーたる者、きちんと把握しておかねば。いや、もうリーダーじゃないか。
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