俺は空気の読める、デキるリーダー ※個人の感想です
「王都・リオは、このアンティクトンでも有数の規模と歴史を誇る、麗しい大都市でした。街の中心部の王城には、辺り一帯の地を治める王が住まい、歴代の国王は代々、都の名を受け継いできました。当代の――いいえ、
闇に包まれた道を歩きながら、今は亡き街の話を聞くのはそれほど愉快なことでもなかった。
滅びたものについての話なので過去形ばかりになるのはしかたないが、やはり気がめいる。わずかな星影だけが頼りの、人っ子ひとりいない場所にあう話題とは言いがたかった。
「街は魔王の居城近縁に位置し、地理的には常にその脅威にさらされる土地でありながら、魔王の侵攻を長く退け、繁栄を享受していました」
ふむふむとうなずきながらも、重めの雰囲気についつい「王様が魔王の仲間になったら『魔リオ』になるのかな、ワ◯オ的なやつ」と小ネタをはさみたくなる。が、デネブのまじめな語り口に忖度して自重。俺は空気の読める、デキるリーダーだからな。この暗さのなかでも興味なさげにあくびを連発しているのがよく見える、そこの森の住人とは違うのだよ。
「王都の平和を支えていたのが、強固な聖騎士・クルセイダーたちと、彼らが束ね率いた王国軍です。クルセイダーは、武芸に秀でた者のなかでも選り抜かれた出色の戦士にのみ許される特別な称号。授けられるレベルの下限は五十で、剣術などの武術に長けるだけでなく、王家に絶対の忠誠を誓い、指揮官としての戦術・戦略スキルを備え、義を重んじ、教養があって、礼節をわきまえる者だけが許される最高位の栄誉」
要は俺とまったく逆の奴らか。いけすかねえ。
「そのクルセイダーに率いられる隊もまた精鋭ぞろいで極めて強く、長きにわたって不敗の歴史を刻み、ひいては王国の不敗と王都の平穏を維持してきました」
負けなしの戦士、軍、国だったわけだ。それがどうして滅亡した?
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