これで勇者がショック死したら世界が終わるんだぞ!

 いきなり、大声とともに上から黄色い塊がだらんとたれてきて俺は飛び起きた。

 上の段からソアラがいたずらっぽく覗き込んでいる。

 ビビったー。おまえ、これで勇者がショック死したら世界が終わるんだぞ! ――いやまあ、勇者のくせにショック死すんなよって話だけど。つーかすでにもう、一回してるし。転生前の死因もひどけりゃ転生後のステータスも目もあてられないっていうね。アンティクトンこのせかい、俺が勇者で大丈夫か、我ながら。


 逆さまの顔が、アルくん欲求不満そうな顔してる、とくすくす笑う。隣のベッドの上段から、勇者様、とデネブにじろりねめつけられた。そ、そんな顔してねーしっ、と俺は体を起こした。

 高い位置に座した第一使徒はじとっと見すえたままだ。圧がすごい。耐えかねて俺は顔をそらした。仲間ににらまれてびくびくする奴をたぶん勇者とはよばないと思うんだ、世間一般的に。だからこんな勇者で大丈夫か?(大丈夫だ、問題ない)


 生首をぶら下げていたエルフが、よっ、とそのまま軽い身のこなしでくるりと一回転する。瞬間、俺は野生動物の反射神経を発揮してチラチャンスをゲットしようと振り向いた。

 だめだ、黄金の髪が突風にあおられるように舞うのが見えただけだ。のがしたか、ちっ。


 残念がりながら、視界の端でなにか不穏な気配が漂っているのを感じた。上からのデネブの圧。可視化したら紫色をしてそうな負のエネルギー。ジョ◯ョだったら「ゴゴゴゴ」って擬音がコマいっぱいにデカデカと描写されてるだろう。


「さ、さて、ひと休みしたことだし飯でも食いにいこー」


 俺は、オーラのほうを見ないようにして棒気味に使徒たちへ呼びかけた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る