君の縄、縄師が那覇市で君の罠。君の庭、キジと鶏、木に野中。君の母、父の中田市、君よ腹。君のなか、イキそ生出「少し、頭冷やそうか」…君な○は?

 【エリース】の街影はあっけないほどすぐに見えてきた。

 三日間、散々歩き回ったのに、こんな近場で行き倒れになってたなんて。俺はがくっときた。こんなのでくたばったら死んでも死にきれないわ。


 気が緩んで、なにげなしに「デネブはなんのために旅をしてるんだ」と尋ねた。

 横を歩いていた魔法少女が、はたと足を止めた。振り返ると怪訝な顔をしている。

 あれ? 変なことを聞いたかな。


「あたしまだ……名前、言ってないですよね?」デネブは困惑した顔で俺を見た。


 あ、やべっ。俺はやらかしたミスに気づきあわてる。

 ステータスを見られるのは俺だけだ。普通の人間は、ゲームみたく他人のレベルやらHPやらはチェックできない。うっかり口をすべらせた。


 デネブの困惑は驚きへと変貌していく。やっば、ストーカー的な奴を見る目だ。

 俺は中途半端に両手を突き出し、愛想笑いでどうごまかそうかとあせる。俺の言いわけに先んじてデネブは


「勇者……」


 もともと大きな目を皿のように見ひらき、そうひとこと漏らした。


 あれ……? 

 なんで俺が勇者だってこと知ってるんだ? 俺もまだ話してないよな、たしか。酒場でも【戦士】で登録したはずだし。こいつこそどうして俺のことを?


 困惑するのが俺のターンになったところで、デネブは突如、草の上へとうやうやしくかしずく。


「お探ししていました、勇者様っ。私は【勇者の使徒】魔道士・デネブです」

「は、はあ……」


 俺は間の抜けた返事で頭をかいた。

 唐突な話に面食らい、どう反応していいやらわからない。

 頭に乗っかったピンクのデカリボンを見下ろしながら、この子のパンツもピンク色なのかな、とまったく関係のないことを考えていた。

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