失言するわ神業でごまかすわこの世界の神、なんなの

失言するわ神業でごまかすわこの世界の神、なんなの



『わかったようだな、わしが全能の神だとい――』


「自分でやれよっ」

『えっ?』


 幻聴もとい神は、虚をつかれたような間抜けな声をだした。


「いや、自分でやれって、魔王討伐。全能なんだろ、ガーンって雷ぶちかませるんだろ。だったらてめえでやれや」

『いやあ、その反応はちょっと想定の範囲外なんだが……』

「普通に考えたらそうなるだろーが。レベル一で、装備も有り金も全部盗られた俺が行くより断然早いだろ」

『だが、勇者が魔王を倒すのはお定まりの様式美というか……』

「知るかっ。てかおまえが連れてきたんだったら早くもとの世界に帰せやっ。俺は見たいアニメがあんだよっ」

『ええい、黙れ!』


 目を焼く稲妻、轟く雷音。

 二発目が落ちた。俺は耳をふさいでうずくまった。こんなヘタレを勇者に仕立てあげたいのか、自称・神のじじいは。


『おまえの生殺与奪はわしが握っている。首尾よく魔王を打ち倒せばよし。さもなくばこの異世界アンティクトンで朽ち果てるがいい。なお、再び生き返れるとは思うな。二度目の転生はない』


 転生。

 そうだ、俺は家族三人の怪死を目にして死んだんだ。今の今まですっかり忘れてた。


『その親兄弟の命運もまた、おまえのゆくすえにかかっている』

「なんだと?」

『魔王を滅ぼし復活した暁には家族もよみがえろう。だが、果たされねば、一家四人は謎の死を遂げたとマスコミに――』

「おいちょっと待て。てめえのマッチポンプか、もしかして」

『えっ?』


 また間抜け声で神は聞き返す。


「え、じゃねえよ。あんな不自然に全員死ぬとかありえねえだろ。だいたいファンタジー世界の神がマスコミとか口にするか? おまえなにもんだよ、ちょっとツラ見せろやツ――」


 落雷。三つ目の焦げ跡ができた。俺は胎児のように丸まって耐えた。


「ちょ、マジでビビるからガーンやめろ、ガーン。雷でごまかすの禁止っ」

『この旅はおまえのみならずおまえの家族も――』

「マイペースかっ」


 家族の命まで背負い込まされるとは。 どす…… どす……

 デブスで腐女子の妹、ネトゲ廃人の母親、無職でギャンブル狂いの父親。 どすん……どすん……

 ろくな顔ぶれじゃないが、それでも一応、俺の家族だ。見捨てるわけにはいかない。 どすんっ、どすんっ

 こうなったらやるしか――てか、さっきからなんか地響きのような音が聞こえてくるんだが?


 辺りを見回してみるがなにも見当たらない。

 重量感のある音は次第に近づいてくる。背後からだ。真後ろを振り向く。

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