エピローグ

 3017年。イタリア、ローマ郊外に1隻の宇宙船が着陸した。


 それは5世紀前に突如として通信が途絶えた伝説の船コスモ・クロウラー・ワン。未だ成し遂げられぬ火星地球化計画マーズ・テラフォーミング・プロジェクトとは違い、太陽系外惑星への踏破という前人未到の偉業を成し遂げた真の英傑たちが乗った船。当時、乗組員が遥か彼方の大地に降り立った映像は地球をおおいに沸かせたものだ。3人の名は宇宙開発史に赤太字で記されている。


 その帰還に観衆は沸いたが、船の内部に乗組員の姿は見あたらず、赤黒い不気味な石があるだけだった。口のような器官が蠢き、どう言う原理か音声を形成した。そのを聞いてひとりの金髪の美女がバネ仕掛けの人形のように駆け寄った。それは彼女にとって永い間、本当に永い間待ち焦がれ続けた、愛しいフィアンセの声帯が発する懐かしい声だった。


「ジョン、ジョンなの!?待ってたの私…ずっと、ずっと!!お帰りなさいジョン、もう離さないわ!」


 しかし赤黒い喋る石がその呼びかけに応えることはなかった。決められた文句を、ただただ延々と繰り返すだけだった。『遥か彼方のインベーダーさんへ。ここは惑星カラバシュグレナダ。あなたたちがプロキシマ・ケンタウリbと呼ぶ星です。私はここから、あなた方へメッセージを…』――

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キノコ・タケノコ戦争 あるいは3017年のスペース・インベーダー ヱビス琥珀 @mitsukatohe

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