氷世界の
俺とミルがアイスポイントから出るとき、ユキやブリザードはアイスポイントの山脈のような壁まで見送りに来てくれた。
「ありがとうユキ、ブリザード」
「あなたたちが持つ目的。達成されるのを楽しみにしてるわ。そして感謝………あなたたちに出会えて嬉しかった」
ブリザードが作るトンネルを通りアイスポイントから出た。後ろを振り返るとプリン型の氷の山脈に囲まれた建物のようなアイスポイントに少し親しみを感じた。
「マイン、ミル。気をつけてな。こんどは遊びに来い」
俺とミルはブリザードと握手を交わしたあと再び2人で氷の壁の上を、氷の平野を歩き出した。手には4つのキューブ。当初の目的どおり氷の壁をコントロールしやすくなり、国家間の連絡も取りやすくなる。
「まずはツララヒョウ連合国に戻ってキューブの説明をしようぜ、氷があっても連絡が取れる国家間の連絡網や作業が効率化する事、困る人が減らせるかもしれないこと」
「そうですね」
俺たちはきたルートを戻るだけで、氷の平野で目印もない。ツルハシでつけた目印のみだ。しかしその一つ一つに厳しくも充実した目的への思いを思い出させてくれた。
「初めてミルと会った時はこんな旅をするなんて思ってなかったよ」
「なんです藪から棒に。私もですよ」
「俺は………ミルと一緒にここまで来れてよかった」
「………私もですよマイン」
ミルは横顔でもわかるほど笑っていた。つられて俺も笑顔になった。思いかえすと氷鉱夫となってから常に充実していたが、特にミルとそれに友達と共に過ごす時間は何にも変えがたいものだった。嬉しくて誇らしくて楽しいアイスブレイクの生活だった。
数週間、数ヶ月かけてあと数十キロでツララヒョウ連合国というところまできて、俺たちは氷のシェルターで休んでいた。残りの食料も少なく、後は一気に戻ってしまう方がいい翌日そう考えて俺たちは荷物を整えた。
「いよいよだな!」
「そうですね」
リュックを背負い、ベルトを閉め、手袋をつけた。ボロボロになってきた装備にも感謝だ。俺とミルが2、3歩ツララヒョウ連合国に戻ろうと進むと急に俺とミルの体が引き寄せられるようにくっついた。
「なんだ⁈」
「お帰り〜!!」
聞き覚えのある声が耳元からした。しばらくすると俺とミルを巻き込むように肩を組んだクリヤが姿を見せた。斥候部隊なので氷壁の上にいることは不思議ではないが、まだ国から数十キロあるはずだ。斥候部隊にしては遠出すぎる。
「クリヤ⁈なんでこんなとこに」
「たまたま見つけたの!」
「たまたまってここ数十キロ地点だろ⁈」
クリヤはそれを聞くと嬉しそうに笑い、俺たちの前に直立する。胸元には銀色のバッジをつけている。ヘアスタイルも体系も変わっていないが、何かが変わっている。
「氷鉱夫斥候部隊隊長!!クリヤ!その索敵、捜査範囲は拠点から100キロ!」
とんでもない成長報告を聞かされ俺たちは驚愕した。そしてついでのように隊長になっている。褒めて欲しそうなクリヤにミルは勢いよく近づいて手を握る。
「やりましたねクリヤ!」
「わ…ミルがなんか積極的!」
「そ、そうですか?」
クリヤがニコニコとミルと会話しているのをみているとなんだか急に力が抜けてきた。安心感だろうか。まだ国についていないので気は抜いてはいけないはずなのに。
「でもクリヤ………斥候って2人1組じゃないのか?一応のための同行が………」
「いるさ!久しぶりだねマイン、ミルさん」
クリヤの後方から氷の平野では目立つ緑色のヘアカラーとツルハシの氷鉱夫が近づいてくる。俺は思わず彼に向かって走った。優しく、強く背中を押してくれた友達の1人だ。再会が待ち遠しかった。
「ノルダ!」
「久しぶりだね………なんか2人とも成長した感があるよ。あえて嬉しい………とっても。さ、みんな待ってる」
ノルダはにこりと笑う。俺は自然とノルダとクリヤをみて嬉し涙が溢れてくる。初めての出会い、アイスブレイクも嬉しいものだが、友達と再会はやはりまた嬉しい。俺はノルダと握手を交わした。
「2人がいない間に色々起きたよ。ツドラルさんがツララヒョウ連合国の氷鉱夫の議会の副議長になった。グレンさんは相変わらずみんなを助けてくれる、すごい活躍さ。カゲトはとんでもない歓迎会を用意してる」
「カゲト………歓迎会は任せろって言ってたな」
思い出して自然に笑いが漏れた。
「マイン、ミルさん。おつかれ、色々また話して聞かせてね」
「ありがとうノルダ、クリヤ。戻ろうか………一緒に」
「そうですね」
だんだんとツララ塔が見えてくる。はっきりと見えてくる頃に俺はギュッとキューブを握った。まだまだやることはたくさんだ。だがその前にみんなと再開したい。そして新しいアイスブレイクに向けて歩きたい。氷世界に生きるものとして。
氷世界の戦士たち(旧アンチアイスワールド) キューイ @Yut2201Ag
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