ショッピングモールのリーダー

 氷の世界で活動を行う集団は大体二つ、一つは氷の上を旅する流氷、そして自治を行う集団だ。ヒョウの国のように国を作るものもあれば今目の前にあるような倉庫で暮らすことも考えられる。


 氷の中の盆地に立つ倉庫の周囲には人はなく。ただ吹雪が硬い壁に吹き付けている。壁の材質、規模からしてただの倉庫ではないようだ。


「とりあえず近づいてみよう、誰かいるかもしれない」


ブリザードドライから逃げはしたがアイスポイントへの方向からは逸れていない。しかし俺たちがその倉庫のような建物に近づこうと一歩踏み出した途端、真後ろから声が聞こえた。振り向くや否や透明な液体が俺の体に巻きついてくる。


「な、何だ⁈」


ミルは間一髪避け、液体の出所を探る。俺はバランスを崩し氷の地面に打ち付けられた。


「誰です⁈」


「そっちこそ誰だ!ボクの治めるショッピングモールに近づく目的は?」


短髪の少女、一見男の子のように見えるその液体の使い手はこちらをきっと睨む。


「べ、別に俺たちは流氷とかじゃない!アイスポイントを目指して旅しているだけだ!」


短髪の少女はそれを聞くと警戒しつつも俺から液体を巻き上げ、回収する。驚いたことにその液体は流動性をもつツルハシだったようだ。その手に収まるツルハシを少女は依然構えたまま。


「アイスポイントに?」


「そ、そうだよ…あの倉庫にはちょっと寄ってみようかと…」


俺は立ち上がり、ツルハシを構えて相対するミルとその少女に割って入る。そしてツルハシを腰に戻しミルにも手を下ろすように促す。


「………まぁいいでしょう」


「いきなり近づいてごめんなさい!俺はマイン、ツララ=ヒョウ連合国ってところから来たんだ、こっちは同じくミル」


「こちらもごめん。ボクはココ…そこの倉庫みたいに見えるでかいショッピングモールのリーダーだ」


リーダー、その響きに俺たちは驚いた。ぱっと見14歳ほどの少女が人数規模はわからないにしてもあれだけの面積の建物でリーダーをしているとは思わなかった。


 ココの見た目は2、3枚重ねたコートに後付けしたような鞘にツルハシを収納し、少し考える仕草をした。若干の静寂が続いたあとココは口を開く。


「………マイン、ミル。お腹空いてる?」


「ん?………まぁまぁかな………藪から棒にどう」


「食料のストックは?」


「缶詰いっぱい…15日は保つと思う」


 再びココは少し考える。そして先ほどまで一触即発の雰囲気だったミルの方を向く。


「………ミル…変わったツルハシだけど…強い?」


「一般的な守護者ならタイマンで行けます。マインも大体…同じかと」

 

「じゃあ!…最低限の衣食住は保証する。だから…」


ココは嬉しそうな顔をしたあと真剣な顔になった。


「ボクたちに力を貸してくれないかな?」




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