告白

 ミルとカフェで話してから1週間は仕事中に考え事をすることが多くなった。氷を削り土地を広げ、資源を取り出す。しかしヒョウの国のカゲトなどのように全てがうまくいかない場合もある。


「なぁグレンさん。氷の壁の向こう行ったことある?」


「…俺はねぇな。斥候部隊は氷の壁に登ってスケートリンクみたいなどこまでも続く氷の床を探索してるが」


「なるほど…」


俺は電子レンジを取り出すと配達ボックスへと運ぶ。以前と比べるとジャス地区第3は広くなった。配達ボックスまでも遠くなる。氷の壁を削っているのだから当然だ。


 作業後俺は他なんとなく控え室に残っていた。疲れているわけではなく、思考にモヤがかかるようなもどかしい気分だ。


「氷鉱夫は人のために動き、協力する。アイスポイントで何か得られれば…もしくはキューブを手に入れられたら…」


俺は控え室のドアを開け放った。冷気が吹き込む。強めにドアを閉めて俺はツルハシ携えて走った。今からやろうとすることは計画がめちゃくちゃだ。ツドラルさんに言われたように無策かもしれない。けど動かずにはいられなかった。


 走り、ついたのはツララ塔。氷鉱夫たちの出入りが多く、顔見知りもいる。氷鉱夫のおかげ、といっても氷鉱夫だけではないが、産業は発展する。しかし俺は俺という氷鉱夫でできそうなことを見つけた気がした。


「マイン?何をしているんですか?」


ミルが俺の方を叩いた。彼女はいきをきらしている。顔も紅潮している。


「多分ミルと一緒…」


俺は自信なく彼女を見た。するとミルも気まずそうに俯いた。ツララ塔の前で俺たちは互いの意思を確認することにした。


「この前聞いた話ではアイスポイントに氷の壁のヒントがあると思う」


「人のために動く氷鉱夫として間違ってはいませんだけど…」


氷鉱夫の大切なことである。協力が抜けていた。1人でできることには俺たちには限度を感じる。だからここで見るに会えたのはよかったかもしれない。


「俺とミルが…」


「協力してアイスポイントを目指し、氷の壁について国の発展のために有利なヒントを得る」


ミルは力強く言葉を放った。気圧されんばかりだ。意思を丸ごと投げ込まれたような感じだ。

でもミルと俺の意思は一緒だ。


 2人でツララ塔なドアを開けた。いつもの温風が俺たちを包む。考えれば俺たちはいつも守られていた。ツララ塔がその証拠だ。氷鉱夫というビジネスを展開して、俺たちを守り管理していた。基本戦闘が多人数でされるのもおそらくそれが原因だ。


 そしてグレンさん、ツドラルさんという氷鉱夫。安心感を与えてくれる。そんなバリヤーから俺とミルは自ら出るという意思を持ってしまった。保護されているはずの氷鉱夫として。

 

 氷鉱夫総合局。ツドラルさんの事務所だ。ツドラルさんは氷鉱夫を取りまとめる役割を担っている。意を決してドアを叩いた。


「どうぞ」


「失礼します、ツドラルさん」


俺はミルと共に入室する。するとツドラルさんともう1人確か氷鉱夫議会の議長も椅子に座り作業をしていた。


「やぁ、噂は聞いてるよ。マイン君、ミルさん。優秀で…」


議長は優しく話し始めたがすぐに何かを察知したらしい。引退前は凄腕の氷鉱夫だという噂も聞いた。気づき。それは氷鉱夫ではよく使われる力だ。


 氷のなかの製品に気づき、戦闘において弱点に気付く。俺たちが何か考えがあると言うのはツドラルさんと議長が察知するのは容易いだろう。


「議長。聞いてやりませんか?」


「…うむ」


ミルは少し震えているようだ。今からいうことはそれほどのことだ。俺は震えるミルの手を握った。


「マイン…」


「意思を…表明しよう」


「…そうですね」


「議長さん。ツドラルさん。俺とミルはアイスポイントを目指したいと考えています」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る