諦めない

 協力を申し出たのは友人含めトップクラスの氷鉱夫ばかりだ。ジャス地区第3はもちろんカフェリア地区第一はミルが協力を要請したのだ。


 そこからは連鎖のように協力の申請が国中の氷鉱夫に飛び交った。人が人を呼んだのだ。


 マインがコンプス地区第二に行くとノルダが快く承諾してくれたがツドラルさんはその場にいなかった。また、グレンさんも都合がつかないということで来れなくなってしまった。


「まずはどんどん氷削って製品取り出しましょう!」


グレンさんとツドラルさんがきてくれなかったのは痛いがこちらの都合で頼んでいるのだから文句を言ってはならない。今いるメンバーも指折りの実力者たちだ。


 今氷を削るスピードはおそらくどんな採掘氷さ場よりも早いだろう。氷片が足元に溜まるたびにどんどん解けるように氷の体積は減っていく。何せオールスターだ。


「カゲトもう少し腰を入れるんだ!」


「わかった!」


カゲトは誰よりツルハシを気合を入れてふっていた。ガール氷鉱夫団のため誰よりも考え行動したのは彼だ。カゲトに応えるべく俺も製品向かって氷を削る。


 1時間も削っていると採掘氷場の入り口が遠くに感じるほど氷壁は後退している。削れば削るほど採掘氷場は広くなっていく。

 取り出された製品はブルーシートに並べられ、電子レンジ、冷蔵庫、その他資源となるものが盛り沢山だ。カゲト含めガール氷鉱夫団はそれを宝のように見つめていた。


「すごい…これだけでボール氷鉱夫団に張り合えるぞ………?!」


「そりゃトップクラスの人たちに協力頼んだからな!」


俺はツルハシを止めて汗を拭った。見るとカゲトは息を切らしているが爽やかや表情だ。先日の打ちひしがれるのみだった時とはとんでもない違いだ。


「若!!ビックニュースです!」


氷の壁の上からクリヤと共に飛び降りてきたガール氷鉱夫団の副リーダーは興奮しているようだった。クリヤも頬を紅潮させている。


「な、なんだ?」


「発電所!!数メートル先に!これ掘り出せば一気にガール氷鉱夫団は勢力を取り戻せると思うよこの副リーダーさん曰く!」


クリヤはひゃつほい!というとそのことを他の氷鉱夫たちに伝えていく。副リーダーの男はがしりとカゲトの手を握る。


「若!抜けていった仲間も、ツルハシも戻ってきます!」


 カゲトは少し震えている。希望だ。ガール氷鉱夫団のことを考え続け、隣の国にまで助けを求めた諦めなかったことが功を奏したのだ。


「やったなカゲト!」


「本当に、本当なのか?ガール氷鉱夫団は…仲間は…ボール氷鉱夫団に吸収されず…ここで…またみんなで…」


「本当さ…クリヤは斥候部隊だからな。氷の中を観察するのにたけてるし、もし見にくくても氷を鉱技で透明にして確認できる」


涙目のカゲトの背中を俺はポンと叩いた。氷の壁の向こうにうっすら鉄の壁が見える。おそらくこれが発電所だ。俺はツルハシの鉱技を発動させた。


「一気に行くぞ」


 推進力を得たツルハシは氷を砕き一部だか発電所の壁を露出させた。俺の発動を気に席を切ったように皆が鉱技を発動させる。削るスピードは格段に良くなる。角が見えてきたと思えばパイプが見え、パイプが見えたと思えばドアが見えた。


「みなさん!発電所は傷つけちゃダメですよ!」


「マインが1番危ないんじゃないんですか?」


いつのまにかミルが隣でツルハシを振るっていた。ミルの技はパワーが一般の鉱夫が桁違い、子供と大人ぐらいの力の差だ。


「ミル!思いっきり頼んだ!」


「思いっきりじゃダメです。程良くですよ」


俺は少し楽しくなってきた。みんなと協力し、大きなことを成し遂げられそうだ。カゲトは俺に引っ張られ驚いている様子だ。しかしすぐに俺の意図を理解したようだ。ミルの突風に巻き込まれかねない。


 ミルの突風が氷を吹き飛ばす。発電所表面を撫でた突風によりガラガラと氷塊が辺りに散りばめられる。が、それに注目するものはいなかった。


 目標がガール氷鉱夫団復興が具現化したような建造物が姿を現した。大きな発電所だ。そしてガール氷鉱夫団の大きな功績だ。


 何時間も削りっぱなしだった俺たちは近くの氷塊に腰掛けた。汗だくだから氷で濡れるのは気にならなかった。


「なぁカゲト…ついにやったな!」


「マインの…みんなのおかげだ…」


「でも…カゲトが諦めなかったからだぜ?カゲトの諦めの悪さがこの結果だ」


俺はにこりとしてカゲトを振り向かせた。そこには多くの資源、生活必需品が所狭しと並んでいる。




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