パーティー会場
ドレスというのは機動性に欠けるらしい。ミルのスピードが格段に下がっている。しかしスーツという慣れない装いの俺も例外ではない。
「やばい!遅刻する!」
「パーティー開始まで後2分しかないですよ!」
「なんで同化させたツルハシ解いてから着替えなかったんだよ!」
「いけるかなと思ったんですよ!ごめんなさい!でもマインもなんか別のカフェに入っていたじゃないですか!」
「ごめん!」
謎の言い合いをしている正装2人が駆け抜けていく。商店街の人々の視線が気になるが、今は恥ずかしがっている場合ではない。
ようやくツララ塔が見えてくる。ツララ塔前の広場にはほとんど誰もいない。氷鉱夫たちはもうすでにツララ塔の中の会場に入ったようだ。
ツララ塔にパーティー開始1分前。ギリギリで滑り込む。肩で息を切らした俺とミルは入り口近くの氷鉱夫の視線を集めてしまった。
「はずかしい…」
「まぁ、間に合っただけいいでしょう」
「………突風と推進力の技を使う2人が遅刻寸前とはな……気を緩めるのは今日で終わりにするんだなマイン、ミルさん」
呆れたように俺たちに水の入った水筒を投げてきたのはカストルフさんだ。彼について会場の奥の方に入っていくと料理の匂いが鼻をついた。
「わ、すごい……」
「開会式が終わってからだマイン。ほら前の台を見て」
様々に装飾が施され、シャンデリアのもとに建てられた台の上にはツドラルさんがマイクを持って立っていた。なぜか作業服だ。
「この度は防衛に協力してくれたことに感謝する。氷鉱夫の本分は人々の生活を守ることである。採掘にしても、戦闘にしてもだ。そして今回の皆の働きは戦闘という分野において氷鉱夫として十分な成果を上げている………」
先ほどの喧騒がしんと静まり返る。ツドラルさんは皆の注目を集めて一言も発させない。しかし次に続いた言葉で少しざわつきが取り戻されることになった。
「………続いて今回参加した氷鉱夫たち個別の講評に入る………」
会場の氷鉱夫たちは氷を飲み込んだような顔になった。今回参加したのは何百人もの氷鉱夫だ。それを個別講評ということは…
「………いつになったらパーティー始まるんだ?」
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