ツララザード

ツララザードの鱗がぺりぺりと剥がれミサイルのようにこちらに射出される。規則性がなく避けにくく幾たびか二の腕や頬のあたりを鱗がかすめた。受けてばかりではいられなかった。


「弾くぞ!」


グレンさんの一声で俺とクリヤはツルハシで一つずつ鱗を弾いていく。弾くたびに腕が痛むのはかなりのスピードである証拠だろう。


「私が…」


クリヤが半透明のツルハシを自分の胸あてに当てるとクリヤは溶けるように空気と同じ色になる。


足跡、足音を残さないのでクリヤの位置が味方からもわからない。


 しかしツララザードは何かを察知したのか尻尾で真横を一振りする。空振りしたかのように見えるが直後壁に打ち付けられ透明化がとけたクリヤが目に入った。


「ぐぁっ…」


「クリヤ!電光石火!!」


俺はツルハシの推進力を使って加速した。ツルハシにすこし振られながらもツルハシをなんとか突き出し突進する。


 電光石火はツルハシと共に自分の体もおしこむ体当たりの鉱技で自身にも多少の反動ダメージがあるが強力だ。ツララザードは電光石火によりすこし後退し、クリヤはこちらに下がってくる。


「げほっ…痛い…」


クリヤはお腹をさすりながら再びツルハシを構える。尻尾はトゲや重りはないものの単純な威力が高いようだ。


「じっくり行きたいが…そうも言ってられないな…」


グレンさんは再び再開した鱗の射出をツルハシで盾を作り防ぎながらいう。


「それどういう…」


 直後遠くからどよめきと轟音が聞こえてくる。氷鉱夫と思しきどよめきが聞こえてくる訳は一つと考えられる。


「まだ一体戦線を抜けてきやがる!早めにツララザードを倒すぞ!」


 グレンさんはツルハシに炎をともした。その炎は冷え冷えとしたあたりの空気を一瞬で熱気に変える。


 炎をなびかせ、グレンさんはツララザードに突進した。俺、クリヤもそれに続く。


「豪炎衝!!」


頑強な鱗を打ち飛ばすほどの衝撃が放たれ、あたりのベンチやらがひっくり返った。さらに熱気は季節が変わったかと思うほどだ。ツララザードはあまりの威力に呻いている。


「つづけ!」


電光石火、透明化、俺とクリヤの追撃がツララザードに襲いかかる。しかしヒットの瞬間、ツララザードは硬い鱗を弾のように辺りに無差別に撒き散らした。


 ガツン、とツルハシはヒットするもそれに合わせたツララザードのカウンターは俺とクリヤの胸当てをいともたやすく打ち破った。



「ぐぁっ…!…カウンターか!」


「で、でも倒せたよ…」


 しかし喜びはない。胸あてを打ち破られたのはかなりショックだ。胸当てがなかったらと思うとゾッとした。


「2人とも平気か?」


「う、うん…だけど胸あてが…」


「…かなり攻撃力があったな…次の相手の接近までに修復しろ」


グレンさんは腰のバックから防具用の修復セットを俺とクリヤに投げて寄越した。中には糸や針、そして皮、つぎはぎなど防具と同じような素材が入っていた。


「今日それ1日中持っといていい」


「ありがとう、グレンさん」


「ありがとうございます!」



 

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