顔合わせ

 前日の戦闘から一晩明けた朝、俺はジーン先輩に起こされた。と思いきやまだあたりは暗く、星が見えるほどだ。先輩がついてきてと言うので俺は寝袋から這い出て眠い目を擦りながら外へ出る。


 テントから出るや否や冷たい風が俺を完全に叩き起こした。そしてもうすでにそこにはミル、ノルダ、クリヤがいた。


「な、なんですか先輩…こんな遅くに…」


「氷鉱夫マイン、ノルダ、ミルさん、クリヤさん。全員揃ったね」


ジーン先輩は白い毛髪を風になびかせこちらを見て確認する。先輩は寝巻きではなくすでに防具とツルハシを身につけている。


「ツララ塔本部よりここへお達しだ。君たち4人は国の内部の手助けにいってくれ」


「内部に?ジーンさん…それはどう言う…」


ミルが伏し目がちにそう尋ねるとジーン先輩はこの国のマップを広げて説明を始めた。


「おそらく2日目は1日目より多くの相手がくる。そしてつまりもう一度隔離バリヤーをくらって氷鉱夫の頭数を少なくするわけにはいかない」


「なるほど…それを防ぐため氷鉱夫の配置を散らす…しかしそれでは戦線を抜かれる可能性が…だから内部に戦力をあらかじめおくと言うことですね?」


「そう、さすがNo.1ルーキーだね。隔離バリヤーで氷鉱夫を行動不能にされるデメリットよりツララ塔はあえて侵入されるが戦闘できる氷鉱夫が多くなるメリットをとった」


ジーン先輩はさらに今から行けと言う。なぜなら敵地での夜戦を仕掛けてくるとは考えづらい今が移動のチャンスだからだ。


「わかりました先輩!しっかりやってきます!」


「うん、よろしくね、僕たちはここを守って少しでも君たちの負担を少なくするよ」


ジーン先輩はツルハシをこちらへ向けてきた。俺たち4人はそれに応えるようにツルハシをコツンと当てる。


 ツルハシは氷鉱夫にとって大切なものだ。それを合わせることは信頼の証、鼓舞や称賛を意味する。

 先輩がにこりと笑うのが夜の闇を照らすランプで明るく見えた。


 俺たちは防具と最低限の食料を持って氷壁近くから国内の奥の方へ駆け出した。


「こっから何キロー?」


「大体グレンさんとツドラルさんとこまで10キロだ!小走りで行けば朝までに着く!」


 寒空の中たが、だんだんと寒さは感じなくなり、額に汗が滲んでくる。白い息を吐きながら走っていると商店街の入り口の開けたところにテントが一つ見えた。


 目的地に着いた、とスピードをおとしてすこし水を口に含む。


「ふぅ…まだ夜明けまであるな…」


「とりあえずテントの中に声かけよっか」


俺がテントに近づくと声が聞こえてきた。聞き覚えのある声が2つ。思わず顔がほころびた。


「グレンさん!きたぜ!」


そう声をかけるとテントの扉があいて、ワイルドな見た目のグレンさんが目に入る。続いてツドラルさんだ。


「よくきたなマイン!ほお…4人できたのか?マインとノルダとミルと…はじめまして?」


グレンさんがクリヤに疑問形で挨拶するとクリヤは胸を張って挨拶をする。


「氷鉱夫斥候部隊のクリヤです!よろしくお願いします!」


「斥候部隊?マインはほんとハイレベルな友達作るよな…俺はグレン、こっちはツドラル、よろしく頼むぜ」


グレンさんとクリヤが握手し、ツドラルさんともするのを見ると早速この後やってくるであろう相手との戦闘の作戦会議が始まった。


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