流氷とヒョウの国
ピンチ
10体を相手にするなんて不可能に近い。だが状況はそう簡単に変わってくれない。女の一声でグンジョウオオタテガミ、アイスバーグフライらの口から閃光が放たれた。俺もミルと横っ飛びに避けるも元いたところは大きく焦がる。助けを呼ぶとしてもノルダたちが休む宿舎まで約100メートル、その距離があれば彼らが俺とミルを捉えたり、倒すことなど容易いだろう。
「いきなりなんなんだ!」
尋ねても返答はない。ただ攻撃をしてくるのみだ。アイスバーグフライが頭上からツララをおとす用意をしている。一体当たり約200本打てるツララだが、今見えるのは二体つまり400本ものツララが俺とミルに襲い掛からんとする。
「やばいっ!!」
「私がっ!!はぁぁあっっ!!!!」
ミルのツルハシが起こした台風のようながアイスバーグフライを絡め取り攻撃を阻止する。ツララは跳ね返され、落とされた。ガラスが割れるような音が響く。だが続けて他のグンジョウオオタテガミたちも爪や牙で俺とミルを襲う。
避けても避けても次の攻撃がくる。そしてこちらから攻撃する隙もない。蜘蛛の巣に絡めとられているかのように動きが制限されていく。
それも当たり前だ。普段多数で相手しているのと反対に相手の方が数が多いのだ。避けるので精一杯、しかも討伐の後で疲労が溜まっている。
「はぁっはぁっ…」
呼吸の音が変わってきた。手足も思うように動かない。どんどん相手の攻撃も俺たちを捉え始めている。
「フィニッシュにしよう…一斉攻撃!!」
女の一声で俺たちは四方を囲まれた。グンジョウオオタテガミ、アイスバーグフライは各々の最大威力の攻撃を俺とミルに放とうとしている。口から閃光が溢れ、爪がきらりと光る。
自然と俺は足が後ろへ向かっていく。背中に何か当たった。ミルの背中だ。彼女も囲まれ、ジリジリと後退を余儀なくされていたようだ。
「な、なんでいきなりこんなことに」
「コレ全部食らったらひとたまりもない…!」
ミルの突風は今日二回使っている。俺の鉱技では応用が効くがパワーが出ず、押し負ける。相手にとっちゃほぼ無力と写ってるだろう。
すると女はこちらを見て話しかけてきた。
「若き氷鉱夫よ…この攻撃を喰らいたくなかったら大人しく捕まることだ」
「…捉えてどうするつもりで?」
「それは後で考える、忙しいんだ、答えは?」
女が勝ちを確信したようにそう言った途端俺たちを囲つアイスバーグフライが急に膝を折った。気絶している。それを見た女は驚愕した。
「な、なんだと⁈」
女はこちらを見た、しかし俺もミルも何もしていなかった。いきなりアイスバーグフライが倒れたのだ。しかしその影に見覚えのある人影を見た。
見覚えのあるツルハシ、ガタイのいい体、の人物が俺たちを助けたらしい。その人物は敵の女をツルハシで指して叫んだ。
「俺はツララ塔派遣!ジャス地区第3採掘氷場のグレンだ!!よろしく頼むぜ!」
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