流氷

突風でコオリドラゴンはバランスを取れなくなった。そこへ氷鉱夫が接近する。このチャンスを逃すまいとほとんど全員が鉱技を発動する。雄叫びと共に閃光、轟音が響き渡りコオリドラゴンへ鉱技が放たれる。


「俺も!いくぞ、ノルダ!」


「うん!」


ノルダは緑色のツルハシを光らせる。二回空を切るようにノルダがツルハシをふると鉱技による斬撃がコオリドラゴンへと高速で飛んだ。



そして斬撃が当たったところに俺今度は俺が鉱技を打つ。


「ボルトスパイク!!」

電気をバチバチ帯びるツルハシが当たるとコオリドラゴンの体をビビッと覆う、膝は折れるもまだ体力があるようだ。


ギラリとこちらを睨み、コオリドラゴンの尻尾が俺を横なぎに捉えた。ツルハシを挟み込むも、猪の衝突のような衝撃によって飛ばされた。


「ぐぁっっ!!…」


空を舞いながら俺はコオリドラゴンを見た。尻尾を振った後コオリドラゴンは明らかに疲労している。おそらく尻尾はコオリドラゴンにとっても、攻撃を喰らう側にとっても重く強いのだ。


決めるならここしかない。宙に舞いながら俺はツルハシをカイさんにやったように着地すれすれでコオリドラゴンに投げつけた。


コオリドラゴンはさっきどかした相手からのツルハシ飛んできて驚いたのだろう。風を切る音を鳴らしてからノルダの斬撃が当たったところにツルハシはクリーンヒットした。


その巨体が気絶して倒れ込むのを確かに見てから俺は着地した。


「ギリギリ勝った…!」


足がグキっと言ったが達成感が勝っていたので痛みはそれほど感じなかった。


氷鉱夫から歓声が聞こえた。ルーキーだけでコオリドラゴンに勝ったのだ。当たり前のことだろう。ノルダもミルもその場にペタンと座り込んだ。2人とも頬を綻ばせている。




 倒した相手は氷壁の上を通して遠くへ離される。調査員などが気絶したコオリドラゴンを引き取りにくる頃にはみんな疲れでミルと俺以外は部屋でぐっすりだった。


「全く、まだ昼なのに…」


「いいだろ…もう15日目だしみんな疲れてんだよ、ミルは平気か?」


「突風一発しか打ってないので無事ですね」


「そうか!よかった!」

今日は他の仕事はないようでミルも俺も暇を持て余している。採掘をしようにも戦闘の後だ、疲労が溜まっている。


「俺も休んでくるか…」


そう言ってミルに背を向け宿舎へと歩き出したところだった。ミルがガシッと俺の腕を掴んでくる。驚いて振り向くとミルの顔に焦りが見えた。


「な、なんだ?いきなりどうしたんだよ」


「け、気配が……!」


「気配?」


直後氷壁の方、いつも氷鉱夫が掘り進めている方から轟音が響いた。そして1秒挟んで閃光。何が起こっているのだろうか。


「け、気配ってこれのことか?」


「おそらく…」


しばらくすると氷壁の上に人が立っていることに俺たちは気づく。それだけでも驚きだが、さらに驚くべきものが見えたのだ。



氷の上に立つ一人の女そしてそのバックにはグンジョウオオタテガミ、アイスバーグフライなど10体がこちらを見つめている。その女が口を開いた。しかし話しかけている様子ではない。何が小声で話している。よく知らないが通信機というものだろうか。


「こちら北部…この国の氷鉱夫と思わしき少年一人、少女一人と遭遇………なるほど…わかりました…攻撃を開始します」


女は氷の壁から飛び降りた。アイスバーグフライたちも続く。


「私たちは[流氷]…資源、領土を求めて氷の世界、壁の上を旅している…」



それだけいうと女は手を上げアイスバーグフライたちと共にこちらへ襲いかかってきた。



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